kotoru / PIXTA

中高年の方々へ「極端な食事制限も良くないですよ」

皆さん、こんにちは。私は台湾で栄養士をしている郭怡君と申します。

日本の中高年の皆さん(特に男性の方)へ、ぜひ注意していただきたいことがあります。

私は栄養士という職業柄、3高(高血圧、高血糖、高脂質)の改善のため、さまざまな患者さんの食事指導に当たることも多いのですが、今回は「あまりに極端な食事制限も良くない」ということをお話ししたいと思います。

(現在「3高」の改善のために医師や栄養士の指導を受けている方は、その方法を続けていただくことを第一とし、本記事の内容はご参考までにとどめてください)

「栄養不足」では本末転倒

確かに「3高」の改善には、食事制限を含めて、食事の内容を見直すことが求められます。

ただ、本記事では、3高を誘発しがちな肥満の解消を意識しつつも、ダイエットや減量を目的とするのではなく、あくまでも血中に含まれる成分から健康を考えていきます。

さて、本題に戻りますが、中高年の方々のなかには、自身で3高を避けるために、食事を極端な「3低」にしている人がいるようです。

しかし3高が良くないならば、3低も決して適切とは言えません。

つまり、健康に良かれと思って3低(少塩、少糖、少油)にしても、そこに誤解や過剰があった場合には、栄養不足から老化への悪循環に陥りやすいということです。

そこには、二つの「落とし穴」があります。

一つは、食べ物の味が淡白になりすぎて、食欲が出ないことです。

若い頃にはスポーツもやって大量に食べていた人が、昔と変わらない食欲で中年期に至れば、必然的に肥満となります。

ただ、通常は年齢とともに食欲も抑えられ、食事も標準的な量になってくるものです。

そこで「3高を避けるため」とは言え、あまりに淡泊な味付けや内容の食事にすると、食欲そのものが減退し、食事も楽しめなくなります。

結果として懸念されるのは、栄養の摂取不足による不健康な状態です。

免疫力も低下し、病原菌やウイルスに感染しやすい体になってしまいます。

肥満になってはいけませんが、今の年齢に適した食事をきちんととってください。

日本の食材がもつ「健康食の知恵」

栄養士である私から中高年の皆様(奥様、ご家族も含めて)にアドバイスできることは、「料理を3低(少塩、少糖、少油)にしたとしても、食欲を減退させない工夫はできます」ということです。

例えば、皆様の日本でつかわれる「だし」は、すばらしいスープですね。

日本料理の鰹節や昆布、干しいたけ等は、その利点の多さから今では台湾でも人気の食材ですが、味や香りが良いだけでなく、「だし」として上手く活用することにより塩分を減らすことができます。

同じく「日本の味噌」も、食塩を単独でつかうよりも、まろやかな塩味とゆたかな旨味をもたらしてくれる優良食材です。

日本の皆様にお話しするのは恐縮ですが、ぜひ減塩のアイテムとして、ご活用ください。

料理に酸味を加えるには、お酢の代わりに、トマトやパイナップル、リンゴなどの果実を入れてみると良いでしょう。

料理につかう調味料を少なくするのは、3高を避ける方法として概ね正しいのですが、それによって味気ない食事にしては、あまりに残念です。

そのぶん香辛料や薬味、色どり、盛り付けなどを工夫して、おいしく楽しい食事を目指しましょう。

脂肪も「少しは必要」

「落とし穴」の二つ目は、極端な脂肪分カットです。

確かに、多くの高齢者は、肥満や慢性疾患の心配があるため、食物から入ってくる脂肪分を極力避けようとします。

しかし、栄養学の観点から言えば、体に不可欠な「良い脂肪」「良い油」もあるということを、ぜひご理解いただきたいのです。

これらが不足すると、目立つほど痩せて、体力が落ちてしまいます。

人間が健康を維持するためには、体内では得られない必須脂肪酸を食物から摂ることが欠かせません。

とくにアマニ油や魚油は、オメガ3脂肪酸を豊富に含み、免疫機能や心臓血管の維持に役立ちます。

血中脂質の値が高過ぎれば、血管そのものに多大な負担をかけてしまうので、これは改善しなければなりません。

しかし、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、Kなど)の輸送を担っているのは血中の脂質ですので、やはり必要な栄養素の一つなのです。

「油(脂肪)は少なくするが、ゼロにはしない」を基本として、牛乳、卵、魚、アマニ油、ナッツ類などから適量かつ良質の脂肪を摂取してください。

一日に食べるナッツ類は、アーモンドまたはカシューナッツならば5粒、ピーナッツならば10粒が目安です。

なお、調理のときに使用する油は少なめにします。

「揚げもの」や「炒めもの」よりも、できるだけ「蒸す、煮る、ゆでる」の調理法で代替してください。

最後に、意識して避けていただきたい食物を、いくつか挙げておきます。

肉類では、加工肉や内臓肉は避けてください。

肉は、少量ならばもちろん食べられますが、脂肪分の多い赤い肉(牛肉、豚肉)は避けましょう。

白い肉(鶏肉)は、脂肪の塊を切り落とせば、あまり心配なく食べられます。

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含むもの、例えば、マーガリン、ラード、ヘット(牛脂)、ショートニングなども「なるべく我慢してほしい食品」です。

もちろん店先で香ばしく焼きあがったアップルパイは、その「なるべく我慢してほしい食品」がはいってるとしても誘惑されますよね、、、適度に健康を保ちましょう。

(文・郭怡君/翻訳編集・鳥飼聡)

関連記事
内なる不満を見つめ、愛を与える方法を通じて、心の癒しと新たな可能性を見出すヒントをご紹介します。
最新研究が脳損傷患者の意識の可能性を示し、医療や家族の対応に新たな光を当てます。
GoogleのAI「Gemini」が大学院生に不適切な発言をし、AI技術のリスクが改めて問題視された。企業の責任が問われる中、AIの安全性や倫理が注目されている。類似の事例も増え、技術の普及とリスクのバランスが課題となっている
健康な心血管を保つための食事、指圧、運動の実践方法を解説。心臓病予防のヒントが満載です!
専門医が語る乳がんリスクの主な要因と予防のポイントを解説。生活習慣の見直しで健康を守りましょう。