北朝鮮、飢餓を利用して人々を制御=脱北者パク・ヨンミさんインタビュー(4/6)
13歳の時、北朝鮮から中国へ脱出したパク・ヨンミさん。人身売買業者に奴隷として売られた後、モンゴルのゴビ砂漠を越えて韓国に亡命した。北朝鮮にいる人々は抑圧という概念もなく、奴隷のような状態であるという認識もないという。ヨンミさんは15歳で韓国にたどり着くと、これまで北朝鮮で知り得なかった価値観を手にした。
「米国人は良い人たち」
私は15~16歳の頃から、韓国で育ちました。そこで言われたのは、「米国人はろくでなしではない」ということでした。米国人は韓国を植民地にしているわけでもなく、良い人たちだと聞きました。北朝鮮で信じていたことは全て嘘であり、韓国で言われたことが真実だ、と聞かされました。
しかし、ヨンミさんは、今まで北朝鮮で身につけた認識をすぐさま否定することはできなかった。共産主義体制の邪性について、ヨンミさんは、監視社会や狭小な世界における支配環境を描いたジョージ・オーウェルの小説「動物農場」から理解を深めたという。
この本を読んで、私の国の人々に何が起こったのかを理解しました。私は当初、金正恩と金正日が問題だと思っていました。彼らこそが、この人間の苦しみと悲劇をもたらした張本人だと思っていました。しかし問題は、「動物農場」の動物たちが、最初は真実を知っていたことです。しかし彼らは恐怖のあまり黙っていました。若い動物たちに至っては、更に馬鹿になります。彼らは他の生活がどんなものかを知らず、何が可能なのかさえ分からないのです。
ヨンミさんは、恐怖で黙らざるを得ない動物たちに自身の身を重ねる。北朝鮮の人々は、金日成の前や共産主義革命以前の生活を知らず、奴隷であることさえ知らない。自由のために戦うことなど思い浮かぶはずはないと言う。
飢餓で人民を抑え込む
北朝鮮は体制維持のために、また人々の行動や考えを制御するために「飢餓」を使うという。ソビエトが崩壊したとき、対北経済援助が止まった。金体制は国民を養うことを止めた。
首都に住んでいるのは、人口の10%に過ぎません。 北朝鮮には50種類もの階層があります。なんという皮肉でしょうか。彼らは共産主義という、世界で最も平等な社会を作りましたが、同じ朝鮮人の間に、実際には51の階級を作ったのです。北朝鮮では旅行許可証がなければ、隣町に行くことさえできません。北朝鮮人の夢は、欧州に行くことではありません。彼らは欧州を知りません。彼らの夢は一生のうちに、自分の国の首都へ行くことです。
北朝鮮政権は、革命を支持するこの10%の中核層を維持していれば、問題ないと考えたのです。それが彼らの成功を測る方法です。つまり10%の人を生かしておけばよく、90パーセントが死ぬまでは、何もする必要はない、という考えです。つまり、体制は私たちに死んでほしいし、飢餓によって人口を浄化したいと考えているのです。
心理学者マズローは「欲求段階」理論を掲げる。人には満たされなければならない欲求が5段階あり、1段階ずつ順番に満たされなければ上の欲求には至らないというものだ。その底辺には食欲や睡眠欲、身体的な安全がある。寒さや飢餓に苛まれる人々は、自由や人権保護などの考えは浮かばないのだ。
北朝鮮の一般的な人々は、昼食を食べた後に夕食の心配をします。「今日は切り抜けたけど、明日は生きられるだろうか」と考えます。一分一秒、生き延びることを考え、食べ物の心配をしています。常に自分の生死を心配しているのですから、自由とは何かを考える余裕はありません。必死なのです。
政権が国民をコントロールするのは簡単です。国民は弱りきっていて、絶望していて、ただ生き延びることと、食べ物を見つけること以外は、何も考えられないからです。餓死はレイプよりもひどい、最悪の拷問です。21世紀において、政権は数百万人の北朝鮮人を支配するために、飢餓を利用してきました。私はいつも言っていますが、北朝鮮は貧しくはありません。政権が国民を養わない。この方法をとっているだけです。
ヨンミさんは、北朝鮮が行うミサイル実験1回で全人口2500万人を1年間養えるとの試算を紹介した。金正恩は2017年以降30回もミサイル実験を行った。
身分制度
北朝鮮では生まれる前から人生が決まっている、とヨンミさんはいう。住居、教育、職業、着る服でさえ身分制度で決まり、国民は「自分」を所有していないという。
人々の自主性はゼロです。写真を友達に渡しただけで処刑されます。ジーンズを履いただけで投獄されます。音楽も読書も、服や髪型まで、自分では決められません。政権が全て決めます。それが大きな政府の究極の姿なのです。
(つづく)
(アメリカ思想リーダー「North Korean Defector Yeonmi Park on Communist Tyranny and ‘the Suicide of Western Civilization’」より)