(Petr Salinger / PIXTA)

「ハチドリとの対話」で抑うつを克服した女性

激しく羽ばたいて飛翔しながら、あたかも空中に止まっているかのような姿勢で花の蜜を吸うハチドリ。

スズメよりはるかに小さく、体重は10分1ほど。その体のどこに、あれほどの強い力と、羽ばたき続ける一途さがあるのでしょうか。

私はトレーシー・ジョンソンと申します。ミネソタ州の生まれで、今はカリフォルニア州リバモアに住んでいます。

以前の私は、自分の健康には何の心配もなく、充実した毎日を過ごしていました。昼間は企業の管理職を精力的にこなし、オフタイムには副業としてライブハウスでギターを弾いて歌い、作曲も手がけていたのです。

ところが6年前、私は突然体の激しい不調を覚えました。2つの自己免疫性筋疾患(強皮症および筋炎)と診断されて、それまでの仕事も、大好きだった音楽もできなくなってしまったのです。この難病のため、私はリバモアにいる父とその妻(私にとっては継母)のもとへ移り、同居することになりました。

私の人生は一転し、真っ暗になってしまいました。日常をともに過ごす父や継母との関係が良くないということではなく、病になったショックのため、人生の意味を見失ってしまったのです。

それ以来、私は重度の抑うつ状態になりました。やりがいのある二つの職業を失ったばかりか、人生の目標もなくなり、自己を肯定する感覚が全く喪失してしまったためです。

そんなある日のこと。私は、いつものように遅い朝食を少しとってから、ぼんやりした意識のまま庭に面したテラスの椅子に座っていました。

天気の良い日でした。柔らかな日差しが私の閉じたまぶたにも感じられます。そよ風に乗って、どこからか花の香りが漂ってきます。

すると突然、けたたましい羽音が私のほうへ近づいて来ました。「スズメバチ?」。思わず目を開けて身構えると、それは人を刺すハチではなく世界最小の鳥、ハチドリでした。私の周りを(まるで何かを私に伝えるように)ぐるぐると飛び回っています。

ハチドリという鳥を、もちろん知ってはいましたが、野生のものをこんなに間近に見たのは初めてだったかもしれません。それよりも驚いたのは、冬でもないのに精神が凍りついたようになっている私に、この無垢な小鳥は顔のそばまで近づき、キラキラした目と鮮やかに光る翼を見せてくれたことです。

いつしか私は、心のなかでハチドリに話かけていました。「ふふふ。ご覧なさい、あなたの頭を。花粉だらけになっているわよ」。そんな私の言葉などお構いなしに、ハチドリは花から花へと蜜を求めて飛び回ります。ただその目的のため、ひたすらに、ひたむきに。

私は、ハチドリに魅了されました。アメリカには多くのプロ写真家やアマチュアの写真愛好家がいて、ハチドリの写真や動画を撮影することが一つの「部門」になっていますが、たしかにこれは奥深く魅力的な被写体です。

そして私は気づきました。「硬直した自分の体と心を努めて動かし、なんとしても人生を取り戻さなければならない」。あのハチドリは、そのことを私に告げに来てくれたのかもしれません。

私は、カメラを三脚にすえて、ハチドリの写真を撮ることを始めました。

初めは500枚撮っても、きちんとピントが合っているものは1枚しかありませんでした。なにしろ超高速で羽ばたき、ホバリング(空中停止)したかと思うとすぐに移動するので、ピントを合わせてシャッターを切るのが、ほとんど「運」に頼るくらい難しいのです。

しかし、私にとって最も重要なことは、写真の良し悪しではなく、私が新しい人生の目標を見つけられたということです。初めは未熟だった私の写真の腕も、経験を重ねるにつれてレベルアップしてきました。

私が、写真家の友人の協力を得て、ハチドリ専門のページをインスタグラムに開設しました。するとすぐに反響があり、これまでに7万5千人ほどのファンを集めています。

私が撮ったハチドリの写真が多くの人に喜ばれていることは、私にとって何より嬉しいことです。それは私の人生を肯定的に意味づける証しだからです。

ファンの誰もが「ハチドリが大好き」と言っていますが、私のハチドリに対する愛情はそれ以上です。何しろ私は、あの子たち(ハチドリ)と「対話」ができるのですから。

(翻訳編集・鳥飼聡)

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