「タオの物語」ある女性が経験した絶望からの再起
チャン・イエン・タオは、米フロリダ州に住む、ベトナム系米国人です。
タオの夫は優秀なエンジニアで、誠実な男性でした。
周囲の誰もが2人の結婚を祝福したので、タオも自分が本当に幸福であると思っていました。
母になれないことの悲しみ
結婚から2年後、ようやく夫婦が心から願っていたことがかないました。
タオが妊娠したのです。以前から母になることを夢見ていたタオにとって、それは神様からの祝福でした。
ところが、体には十分注意しながら日々を過ごしていたのですが、突然、激しい腹痛がタオを襲いました。
子宮外妊娠でした。
ストレッチャーに乗せられて緊急搬送されるタオ。
夫がこわばった表情で、その後をついてくるのが見えました。
激痛にうめきながら、タオは涙が止まりません。
それは、母になることをひたすら願っていたタオにとって最も想像したくない、しかし「避けられない現実」に直面することがタオに分かっていたからです。
タオのお腹のなかの小さな命は、生まれてくることができませんでした。
医師は処置があと10分遅れていたら、タオの命はなかったと言いました。それを聞いた夫は少し安堵したようにも見えましたが、タオはそれとは違う悲しみで、両手で顔を覆って泣いていました。
数ヶ月後、タオはなんとかもう一度妊娠することを望みましたが、夫がなかなか同意しませんでした。
夫はタオを愛していたので、妻の身を案じるあまり、妻を再び危険な目に合わせられないと考えたのです。
それでもタオは夫を説得しました。夫も同意したのですが、その方法として選択したのが人工授精でした。
タオと夫は、巨額の費用をかけて4回の人工授精を試みましたが、妊娠には至りませんでした。
続く苦しみで、ついに極限へ
タオは、自身が不妊の体になったことを認められずにいました。
その気持ちを、夫に告げることもできずにいたのです。
そんな辛い心境のタオに、さらに不幸が襲いかかります。
検診により、子宮がんであることが判りました。
病院で3時間にわたる手術を受け、タオの子宮と卵巣は摘出されました。
「子供を生んで母になる」というタオの悲願の結末は、あまりにも残酷なものでした。
しかもタオは、手術を受けたことによって不足するエストロゲンの代わりに、薬を飲み続けるよう医師から言われました。
その薬は副作用があり、タオを守るよりも苦しめることのほうが多かったのです。
夫には隠して、タオは睡眠薬や鎮痛剤などの錠剤を入手するようになっていました。
いつしかタオの頭のなかに、「自殺願望」という悪魔が住みつくようになっていたのです。
「薬を大量に飲めば死ねる」という悪魔のささやきが、タオの思惟を支配していました。
その「機会」が来たと思い、錠剤の山を口に流しこもうとしたその時、タオの自宅で世話をしていた90歳の老婦人が「タオ、すぐ来てちょうだい!」と彼女を呼びました。
タオは手にした錠剤を投げ捨てて、老婦人の部屋へ走りました。
この老婦人の親戚は遠方におり、頼まれてタオが自宅で世話をしていたのです。
ベッドに寝ていて呼吸困難になった老婦人は、非常に危険な状態でした。
救急車を呼んで病院へ連れていったところ、さいわい老婦人は息を吹き返しました。
ベッドの側でのぞきこむタオに、老婦人はこう話しました。
「タオ。人生は短くて、貴重なものよ。やりたいことを、やりなさい。臨終の時になっては、もう遅いのよ」
タオが先ほど自殺しかけたことを、老婦人が知るはずもありません。
しかし、老婦人の言葉は、まさしく今のタオに向けられたものでした。
絶望からの再起
「でも、どうしたらいいの?」。
タオは、今のままで良いとは全く思っておらず、かと言ってどうすべきかが分からなかったので、つい悪魔のささやきに引かれて自殺へ逃避しようとしたのです。
実はタオの夫もこの頃、生活が非常に荒れていました。
ギャンブルや飲酒、無謀な投資で、ついに破産するまでになっていたのです。
ベトナムにいるタオの母親が亡くなるなどの不幸もありました。
以前からの薬の副作用に加えて、不眠症、甲状腺腫、痛風などで、タオの体はボロボロになっていました。
仏教のお寺へ行って坐禅を組み、神仏にすがって何かを求めようとしましたが、それも無駄でした。
タオの顔がすっかり変わってしまったことを見て、知人の一人が、タオにある方法を紹介しました。それは法輪大法(ファルンダーファ)という中国伝統の修煉法で、人間の心と体を整えるのに非常に効果がある、その知人も「今やっている」と言います。
最後のハードルを越える
タオは、手渡された紹介パンフレットを丁寧に受け取り、家に持ち帰りましたが、そのなかに漢字が入っており、中国からのものだというところに強い拒否感を覚えたので、パンフレットを家の片隅に投げ捨ててしまいました。
数日後、タオは突然意識がもうろうとして食事も喉を通らず、フラフラになってしまいました。
ふと思い出したのは、先日のパンフレットです。
どこかに捨ててあったものを探して開き、そのなかに示されていたウェブサイト上の動画に習って、見よう見まねで、法輪大法のエクササイズをやってみました。
それを数日続けたところ、タオの体に、確かに良い変化が現れ始めました。
体調が落ち着くようになって、寝つきもよく、食欲も戻ってきたのです。
さらに続けた数週間後には、あれほど辛かった痛風はなくなり、甲状腺の腫れも引いていました。
その間にタオは、公園で法輪功(法輪大法に同じ)のエクササイズをやっている人たちのところへ行って、正しい功法の形を教えてもらっていました。
「薬の力を全く借りずに、健康を得られる」。それを初めて知ったことは、タオにとって衝撃的であり、また大きな喜びでした。
夫とともに法輪大法を学ぶ
以来、タオは夫とともに法輪大法を学ぶようになりました。
健康だけでなく、精神面においても法輪大法の修煉がもたらした効果は絶大なものでした。
心が落ち着き、性格が穏やかになって、他人に対して心から優しく接することができるようになったのです。
何か問題がおきても、まず自分自身に反省すべき点はないかを探し、他者へ向かって非難することはありません。
そうした原則を堅持していくのが法輪大法を学ぶ人々の責務であり、健康的な心身が与えられるのは、その結果でしかありません。
この点、明確に人が変わったのはタオの夫のほうでした。
彼は優秀なエンジニアで、もともと良い人なのですが、時に自分の才能を誇るあまり、周囲や部下に対して尊大なふるまいをする悪い一面がありました。
それが人間関係に摩擦を起こすこともあったのですが、法輪大法を学ぶようになってからの夫は、とても謙虚で人当りが穏やかになり、周囲から喜ばれる人間になったのです。
タオもこれには驚いていますが、実際、夫の性格は変わりましたし、夫の長年の持病であった高血圧もいつの間にかなくなっていたのです。
ベトナム出身であるタオはよく、法輪大法に出会ったころのことを思い出しています。
第一印象は、紹介パンフレットの「中国」という文字を見て、ベトナム出身者として拒否感を覚えたように、やってみようとは全く思えなかったのです。
しかし、中国の優れた伝統文化は、現在の政権とは全く別のものです。むしろ正反対の価値観というべきでしょう。
今、タオと夫は仲の良い夫婦であり、ともに法輪大法を修煉する「同修」となりました。
一時は、荒廃した生活のため破産したものの、今では経済的にも安定しています。
大きな悲しみや試練を乗り越えたベトナム女性、タオの物語です。
(翻訳編集・鳥飼聡)