世界中のピラミッド(45)メキシコ ウシュマル
ウシュマル:魔法使いのピラミッド
メキシコ東部のユカタン州の都市、メリダの南にあるマヤ文明の遺跡・ウシュマルは7世紀に建設され、その後200年間、この街は最盛期を迎えました。2万5千の人口を抱え、当時、ユカタン半島の最大の都市であり、宗教の中心地でもありました。
「ウシュマル」は古いマヤ語で、「三度にわたって再建された町」という意味です。ウシュマルが再建された時期はまだ分かりませんが、しかし、学者によるとこの古代都市が建て直された回数は3回にとどまらないというのです。
主要な建築物だけでも何度も復元や修復が施され、各時期の様々なスタイルや特色を持つ建築物となりました。例えば、ウシュマルの最も高い建築物である「魔法使いのピラミッド(Piramide del Adivino)」は、すでに5回も再建されました。
この古代都市の構造も独特で、いくつかの主要建築物は当時知られていた惑星の配列に沿って分布されており、金星を代表する建築物は特に目立った場所に建設されました。
ウシュマルで最も注目すべきところは複雑な装飾と多彩な石像ですが、アンコール・ワットやボロブドゥール寺院、豊かな文化遺産に恵まれたネパールの都市・パタンなどの東アジア世界の彫刻技術と比べれば多少粗雑に感じます。しかし、各地の古代文明にはそれぞれの特徴があり、独自のものがあるので、一緒くたにしてはいけません。とは言うものの、都市内の精巧な配置や、雄大かつ壮麗な建築物群自体、すでに古代文明発展史上の奇跡と言えるのです。
マヤの古い伝説では、魔法使いの老婆が暖めた卵から生まれてきた小人が、一夜にしてこの高さ約37mのピラミッドを建てたと言われています。
魔法使いのピラミッドはウシュマルの入り口から東の方向にあり、他のピラミッドと違って、基壇は楕円形をしています。西側の階段は頂上の神殿部分まで直通しており、古代の祭司たちはここで占いを行ったり、未来を予測したり、各種の祭祀儀式を行ったりしていたと思われます。
魔法使いのピラミッドの設計は非常に巧妙で、毎年の夏至の日、太陽が沈むとき、ピラミッドの西側の階段はちょうど夕日に当たるようになっており、このことから古代の人々がすでに正確な暦法を知っていたことが分かります。
(つづく)
――正見ネットより転載
(作者・意文/翻訳編集・天野秀)