ハッブル望遠鏡が撮影した、最も遠い星の写真。 (NASA/ESA)

地球からはるか129億光年先 ハッブル宇宙望遠鏡が最も遠い星を発見

ハッブル宇宙望遠鏡が画期的な観測を記録しました。はるか彼方の銀河の中に、今までに観測された恒星の中で最も遠く、129億光年先に位置する恒星を見つけたのです。

3月30日に、学術誌「ネイチャー」にこの発見を発表した研究論文を掲載しました。研究者はこの星の重さが太陽の50~100倍、明るさが太陽の百万倍はあると判明したとしています。

研究グループの主要メンバーである米ジョンズ・ホプキンズ大学のブライアン・ウェルチ氏はこの星を「エアレンデル(Earendel)」と名付けました。「エアレンデル」は古英語で、「明けの明星」「昇りくる光」を意味します。彼は「エアレンデルはサンライズ・アーク(日の出の弧)銀河の中でみつかった。「エアレンデル」はこの明るい星にぴったりの名前だと思う」と紹介しました。

エアレンデルは地球の129億光年先にあり、ビッグバン宇宙誕生の起源となった138億年前の大爆発)からわずか9億年後の恒星で、最年長のものだと他の研究者が説明しました。

共同研究メンバーのアリゾナ州立大学天文学者のロジャー・ウィンドホースト氏は「32年に渡るハッブル宇宙望遠鏡観測史上、最も偉大なる成果だ」と称賛しました。今まで観測された最遠の星より40億光年も離れており、最遠記録を上回っているといいます。

またこれらの遠方宇宙の銀河を構成する個々の星々を観測することができれば、宇宙の初期に誕生した星の情報や、宇宙の進化を理解する上で貴重な情報を得られると考えられています。

「エアレンデル」の光は、宇宙誕生とされている138億年前から9億年を経た初期に発せられたものとみられ、宇宙の進化の中で星や銀河がどのようにできたかなど、今後さらに詳しい追加観測が行われれば、重要な手がかりが得られると考えられます。そして、このような宇宙初期から存在する大質量星は、近年、重力波観測により発見されているブラックホールの祖先に対応する可能性もあるため、今回の発見はブラックホールの起源に関する研究の進展も期待されています。

2022年夏からは新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」を使った科学観測を始める予定で、このエアレンデルの観測は早くも2022年後半に予定されているようです。

(翻訳・上山仁徳)

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