董宇紅博士が語る「なぜ17人は感染しなかったのか」(2)
「のどの免疫力」を強くする
実験のためウイルスを人為的に注入してから2日目後に、感染した18人のなかから初めて、咽喉部でウイルスが検出されました。
その後、咽頭のウイルス量は実験5日目にピークを迎えます。
一方、鼻からウイルスが検出されるのは投与から3日後以降で、5~6日後にピークに達します。
興味深いことに、ウイルスは鼻から入ってきたにもかかわらず、先にピークに達するのは喉のほうで、鼻がピークを検出するまでの時間は「喉より1日遅い」のです。
これにはウイルスの特性が関係していると考えられます。ウイルスは、自身の生息に適した「繁殖しやすい環境」を探しているのです。
私たちの咽頭は血液系が豊富で新陳代謝も比較的よいため、鼻腔よりも、ウイルスが生きやすい部位なのかもしれません。
しかし人間の体は、比較的強い防御システムを、喉の近くに備えています。
咽喉は鼻腔の奥にあり、気管、肺への重要な進入路です。ここには当然、屈強な「衛兵」が見張りをしています。
それは咽喉の入り口の両側にある二つの扁桃腺で、その中には病原の侵入を阻止するリンパ細胞がたくさんあります。
また、咽頭粘膜の免疫系も比較的強く、例えば上咽頭の表面を覆う絨毛上皮細胞には多数のリンパ球が密に分布しています。そのため、上咽頭も有益な免疫器官と考えられています。
よくある風邪の初期症状として、喉の痛みや吐き出す痰が多くなるときがあります。
これはまさに、咽頭部の免疫力が正常に機能している証拠と言えます。この部分の免疫システムが十分に強ければ、上気道に侵入したウイルスや細菌を、すぐさま撃退できるのです。
免疫システムは「複数の精鋭部隊」
人間の免疫システムは、いわば「複数の精鋭部隊」であり、それらが見事なチームワークと分業によって、外敵であるウイルスに総攻撃で対抗します。
36人の被験者のうち、17人がウイルスに感染しなかったのはなぜでしょうか。
これは、複数の免疫システムがどのように機能するかという視点から、説明しなければなりません。
およそ、人体の免疫システムは、自然免疫と後天的免疫に分けられます
1 自然免疫系
自然免疫システムの先鋒である粘膜上皮細胞は、防御の第一線にあります。
人体を一種の城郭と考えると、粘膜上皮細胞は「城壁」のように外敵を阻み、万一ウイルスが侵入すると、重要な抗ウイルス物質であるインターフェロンを分泌します。
インターフェロンは城壁の上にいる「駐屯兵」のようなもので、敵であるウイルスを攻撃し、また侵入したウイルスが複製(コピー)をつくるのを阻止します。
さらに、まだ感染していない自身の細胞に向けて、「迎撃態勢」に入るよう警告を発するのです。
数ある自然免疫細胞のなかでもナチュラルキラー細胞は、ウイルスに感染した細胞を素早く破壊することができる「特殊部隊」に当たります。
マクロファージや樹状細胞などのナチュラルキラー細胞は、ウイルスを攻撃するパーフォリンを放出するとともに、ウイルスを取り込んでその性質を「分析」し、得られた情報を後天性免疫系に伝える機能を有しています。
これはつまり、自然免疫系から後天性免疫系への「橋わたし」の役割を果たすものです。
2、後天性免疫系
これは特定の病原体を死滅させるために十分に訓練された、T細胞およびB細胞を含む「特殊部隊」です。
T細胞は、自然免疫細胞から伝達された「情報」を受け取ることができます。
また、あるT細胞は感染した細胞を殺すことによって、ウイルスが体内に広がるのを阻止します。インターフェロンを分泌して、自然免疫系の不足を補うものもあります。
B細胞は抗体を産生するとともに、病原ウイルスを取り囲み、食細胞(白血球などが病原菌を取り囲んで死滅させる)作用により、ウイルスを除去しやすくします。
世界的な中共ウイルス感染の中で、多くの人の関心は、後天性免疫システムだけに向けられています。その結果、例えばワクチンやモノクローナル抗体などの研究に偏って開発しようとしています。
しかし、このたび英国で実施された勇気ある実験の結果を、私たちはどう理解したら良いでしょうか。
新型コロナウイルスを人工投与されても感染しなかった17人の若者は、もとよりワクチンを接種していない人でした。
このことから、ウイルスに対抗するには人間が本来もつ自然免疫力、つまりインターフェロンなどの自然免疫系が重要であることが、改めて示唆されたのです。
(次稿に続く)
(口述・董宇紅/翻訳編集・鳥飼聡)