経済利益で安全保障を犠牲にすべきでない=NATO事務総長
[ダボス(スイス) 24日 ロイター] – 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は24日、スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラム総会で講演し、西側諸国が経済利益を得るために安全保障を犠牲にしてはならないと訴えた。具体的には第5世代(5G)移動通信システムの中国技術の問題や、ロシア産ガスをドイツに送る海底パイプライン「ノルドストリーム2」計画を挙げた。
ストルテンベルグ氏は「われわれの経済的な選択がわれわれの安全保障に影響を与えることを認識する必要がある」と指摘。「われわれの価値観を守ることは利益よりも重要だ」と強調した。
5Gについては「自分は中国との貿易に反対しているのではないが、5G網の支配は安全保障に極めて重大だ」と主張。「われわれの安全保障上、信頼できないサプライヤーに5G網を開放するのは、利害関係にかなっているとは言えない」とも語った。
ノルドストリーム2については良い教訓になったと指摘。自由貿易は多大な繁栄と富につながるが、代償もあるということだと述べた
「独裁政権と関わる貿易はわれわれの安全保障を損なうということだ。そうした際には、われわれはぜい弱さと独裁政権への過度の依存ではなく、安全保障を選択しなければならない」とも語った。
同氏は「われわれは、経済的な選択が安全保障に影響を及ぼすことを認識しなければならない。自由は自由貿易よりも重要だ。われわれの価値を守ることは利益よりも重要だ」とたたみかけた。「自由貿易なのだから天然ガスを自由に輸入してよいはずだという理念や、ロシアから欲しいだけガスを買えるはずだという考え方は間違っており、危険だ」とも強調。「そうした考え方はロシアに脅迫とわれわれへの対抗の道具を与えることになる。これは残念ながら、まさに今明示されていることだ」とした。
ドイツはノルドストリーム2計画の断念に抵抗してきたが、ロシアのウクライナ侵攻が激化する中で稼働手続きの停止決定に追い込まれた。