(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(38)弁護士の使命(5)

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よく知られているように、弁護士が社会正義を実現する主なルートは、刑事事件における弁護である。しかしながら、中国では弁護士が右肩上がりで増える一方なのに対し、弁護士が関わる刑事事件はむしろ減っている。これは決して、弁護士が刑事事件を軽視しているためではない。実際には、弁護を必要とする刑事事件の被告人はいくらでもいる。

だがその一方で、弁護士が逮捕される事件が毎年数十件も起こっており、弁護士自身の権益すら保障されていないという現実が横たわっているのだ。

データが示すように、中国では弁護士が関わる刑事訴訟の案件すら、99%以上に有罪が下されている。これに対し、英国は54%以下だ。現行の行政機関・警察・検察・裁判所が癒着して腐敗してしまったシステムにおいては、弁護士はほとんど何の役割すら果たせないのに等しい。

このような現実を前に、弁護士を信頼する人などいるのだろうか。では、民事事件ではどうか。裁判官個人の力とそれを遥かに上回る背後の巨大な力は、どんな判決結果も思いのままに操作できる。一審判決が出た後の救済措置などすべて、形骸化してしまっている。

例えば、東北地方の省レベルの一部の裁判所は、ここ数年、年初めにある指標を出している。それは、一審と異なる判決を控訴審が出す場合、その割合は2%を超えてはならない、という指標だ。馬鹿げた話だが、これはまぎれもない現実なのである。中国の弁護士は、このような法律の力を超えた存在の従属物にならないと、案件を引き受けることが出来ない。こんな事態が続いていけば、たとえどれほど能力のある弁護士であっても、人々は信頼などするはずがないのだ。

弁護士はいかなる職業よりも、司法制度の公正さに強く深く依存している。その司法制度が腐敗を断ち切らなければ、弁護士が自らの役割を存分に果たすことなど、全く期待できるはずもない。先に述べた多くの弊害は、弁護士業の発展を妨げる最大の要因となり、危機をもたらした。社会全体がこのような危機の存在を容認し、見て見ぬふりを決め込むのなら、その危機は社会全体に及ぶであろう。

 (続く)

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