【大紀元日本5月15日】5月11日ニューサウスウェールズ州の人権協会の招きで、オーストラリア亡命中の中国の自由主義法律学者・袁紅氷教授がメイン講演者として、同協会活動センター主催の「中共への決別と自由中国に関する公開フォーラム」に出席し、講演を行った。社会の各界から参加した50人近くの人は、その大部分が現地の西欧人であった。
袁紅氷教授は冒頭で、「今日の講演を通じて、西側諸国の皆様に、うわべだけの繁栄の裏に隠された本当の中国、正義のない中国、そして苦難の中国をご理解いただければ幸いです」と述べたあと、中国の現状について次のような分析を行った。中国の腐敗した独裁政権統治は、人類史上最大の官僚集団からなっており、癌細胞のように町や村を含め社会の隅々にまで拡散している。この中共の官僚集団が今なお存在するのは、国家テロリズムによって官僚が個人や家族の利益を確保しようとしているためである。「絶対権力は絶対腐敗を招く」という格言があるが、中国の現状が正にそうだ。この数千万人からなる巨大な腐敗官僚集団こそ中国の諸悪の根源であり、苦難の源である。そして、それがために、中国人は、本来持っていたはずの公正、理性、正義、良識および人間性をほとんど完全に失ってしまったのである。
中国には数々の苦難があるが、最も苦しんでいるのは農村出稼ぎ者、次いで失業労働者
袁教授は、中共の政権が始まって以来、中国の農民は常に最下層にあり続けるとした上で、次のように述べた。「以前、中国の農民は人民公社という人類史上最大の強制収容所に入れられ苦難をなめた。1959年から61年の3年間で餓死した2千万人のうち、その大多数が人民公社の農民であった」。袁教授によると、80年代の胡耀邦と趙紫陽のときには農民の悲惨な状況は多少緩和されたが、江沢民の時代になって、中国の農民は再び貧困な状態に陥った。特に中西部の農民がそうである。
袁教授はさらに、“河南エイズ村”等の実例を挙げて現在の農民の悲惨な生活状況について次のように説明した。現在の農民の収入では最低限の生活を維持することさえできず、このため、一旦病気をすれば、わずかの医療保険もないため、いっそう悲惨な状況となる。中国には多くの苦難があるが、最も苦しんでいるのは、農村から都市へ出稼ぎに出た農民たちで、その数は8千万人いると見られている。彼らは奴隷のような地位にあり、賃金が安く、いかなる労働保障もなく、仕事の環境と条件は極めて劣悪で、しかも賃金の支払いがしばしば滞る。全ての中国人は、労働組合を組織して自らの権利を守る手段を奪われているため、農村出稼ぎ者は直面している困難から抜け出す術がない。
このような現状認識の上で、袁教授は、中国農村の貧困理由を次のように考えている。国家の全ての財政支出を中共の腐敗官僚集団が握っており、憲法に中共が唯一の執政党であると規定されているため、官僚がほしいままに悪事を働くことができる。そのため、官僚たちは、己の独裁統治をいかにして維持し、己の組織の能力をいかに強化し、そして、いかにしてほんのわずかの大都市のうわべだけの繁栄を維持しながら海外を騙すかということにのみ関心があるからである。
袁教授は、中国で農村出稼ぎ者に次いで苦しんでいるのが失業労働者であるとして、次のように述べた。統計によると、現在少なくとも1800万人の失業労働者がおり、このうちの大多数が60年代末から70年代初めにかけて仕事に就いた者で、当時の月給はわずか38元であったが、政府は彼らに終身保障を約束した。ところが、現在改革開放によって国有企業が民営化され、しかもその民営化が公平な競争のないままに行われた、つまり、簡単に言えば、国有企業の資産を廉価で腐敗官僚集団と結託した人に売り渡したため、多くの人が失業後保障を受けられなくなってしまったのである。北京、上海、広州などいくつかの大都市では、失業労働者にわずかばかりの補助があるが、それでは最低限の生活を送ることもできないし、そのほかの全ての地域において失業労働者には一銭の補助も支給されない。この人たちは社会で最も救われない層であり、再び仕事が見つかる当てもない。このため、貴州省の遵義市で以前こんな悲劇が起こった。ある失業労働者が子供を連れて肉を買いに行った。ところが、お金が足りないため100gだけ買おうとしたところ、店の人が少なすぎると言って売ってくれなかった。辱めを受けた彼は、毒薬を買って帰り、一家心中を図った。
中共は諸悪の根源であり、中共へのいかなる支援も人類に甚大な災難をもたらす
袁教授は、現在の中国社会における全ての矛盾は民主改革によってはじめて緩和できるものであるとして、次のように述べた。中共は政権を執ったこの55年間で筆舌に尽くしがたい罪悪を行ってきたため、一旦民主改革が行われれば、法律による正義の審判を受けるのは必至である。そのため、中共がこのまま独裁統治を続けるために次に行うのは当然ファシズム化であり、だからこそ、中共は中国にとっても世界にとっても諸悪の根源なのである。
そして袁教授は、中共がかつてカンボジアのクメール・ルージュ政権の大量虐殺を支援し、ユーゴスラビアの独裁者ミロシェビッチやイラクのサダム・フセイン、北朝鮮の金日成、国際テロ組織などを支持してきたことを挙げ、中共のなすこと全てが全中国人民への侮辱であり、世界の人々への犯罪であると述べた。
袁教授は、オーストラリアを含む西側社会が中共の本当の姿を見極めていないのは残念であると述べ、参加者たちに、中共へのいかなる支援も全人類に甚大な災難をもたらすことにつながると注意を促した。その上で、中国のファシズム化を阻止する唯一の方法は中国を民主化に向かわせることであるとし、参加者たちに民主化への支援を呼びかけた。袁教授はあわせて、目先の利益のために中共を支持している政治家やビジネスマンにきっぱりと次のように伝えた。「あなた方は、第二次世界大戦前にイギリスの外務大臣チェンバレンがヒトラーを支援したのと同じことをしています。この種の支援は全人類に甚大な災難をもたらすことになるでしょう」。
参加者の活発な質問で、広範囲の討議が行われる
講演終了後、参加者たちから活発な質問が出され、引き続き詳しい討議が行われた。ある年配のご婦人が、自分が訪れたことのある雲南省昆明の開墾耕作センターの農民の生活は袁教授の言う様子とは違っていたがどうしてか、と質問したのに対して、教授は、「あなたがご覧になったのも真実です。しかし、中共は一貫して、外国の人には見せてもいい所だけを見せてきました。ですから、それは中国の農村の本当の現状とは言えません。中共はいつもこのような手段で世の人々を騙してきました」と答えた。
また、袁教授が北京大学で教鞭を執っていたことに関し、共産党員であるかどうか、また、なぜその職を離れたのかという質問に、教授はこう答えた。中国の大学で教鞭を執る場合、必ずしも共産党員でなくてもかまわない。しかし、昇進したければ必ず党員でなければならない。北京大学を離れたのは、中共がモンゴル族とチベット族に対して犯したジェノサイド(集団虐殺)を暴露する小説を書いたからである。
中共が国民党から政権を奪取できたのは、民衆の支持があったからではないかという質問に対し、袁教授は次のように分析した。中共が政権を奪取できたのは、中国人を騙したからである。中共は、自由な民族聯合政府というスローガンで蒋介石の一党独裁に反対し、知識層の支持を得た。また、農村では、地主の土地を奪って農民に分け与え、農民の支持を得た。そして、当時の民族商工業を支持し、多くの資本家の支持を得た。ところが、中共は政権奪取後、全ての約束を破棄した。人民公社を作って農民の手から再び土地を奪い返し、商工業の改革によって資本家の資産を全て没収し、秦の始皇帝のような独裁統治によって知識層に対して行った民主の約束を破棄した。つまり、中共は人々を騙すことによって政権を奪ったのである。
現在の中国経済は資本主義の市場経済ではないかとの質問に、袁教授は、それは西側社会の中国に対する誤解であるとして、次のように分析した。オーストラリアを含む全ての市場経済の根本は公平な競争であるのに対して、中国では全ての機会が専制独裁によってコントロールされている。その点から言えば、中国は権力資本主義であって、自由資本主義では全くなく、それは社会の財と富の深刻な二極化を生み出すだけである。
袁教授はまた、現在中国で巻き起こっている百万人脱党のうねりについて次のように述べた。中共が政権を執って以来、人々は度重なる災難を被り、中共の暴政によって少なくとも8千万人が命を失った。「共産党に関する九つの論評」によって、人々は中共の本当の姿をはっきりと認識し、共産党がなくなってはじめて新しい中国が生まれると考えるようになった。その結果、ますます多くの中国人が中共の恐怖の影から抜け出して、それと決別しようとしているのである。
質問が相次いだため、主催者は時間を30分延長したが、それでも全ての質問に答えることはできなかった。参加者たちは口々に、今回のフォーラムはとても有意義であり、袁教授の講演によって、中国の現状と中共の本当の姿を理解するために多くの情報を得ることができたと述べた。
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