[ピッツバーグ 31日 ロイター] – バイデン米大統領は31日、2兆ドル強のインフラ投資計画を発表した。政府の権限を活用して米経済を再構築し、中国の影響力拡大に対抗する。
バイデン氏の「米雇用計画」と題した提案は、数百万人の雇用につながる道路などのインフラ整備事業のほか、気候変動への取り組みや高齢者介護などの福祉サービスを充実させる内容で、財源は企業増税で確保する。
バイデン氏はピッツバーグで「これはかつてない一世代に一度の投資になる。大規模で大胆だ。われわれは成し遂げることができるだろう」と述べた。
費用負担を企業に求めても問題はないとし、ネット通販大手・アマゾン・ドット・コムなどの大企業が連邦税をほとんど、もしくは全く払っていないことに「終止符を打つ」と述べた。
今回のインフラ計画は、バイデン大統領就任後の2カ月で2つ目の数兆ドル規模の法案となる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で打撃を受けた経済の支援のほか、労働組合の強化なども目指す。
バイデン政権は、競争激化や中国による国家安全保障上の脅威に対抗するためには、政府主導で経済を強化することが最良の方法と考えている。
ただ、議会保守派や企業団体は、バイデン氏の計画に冷ややかな反応を示した。
共和党のマコネル上院院内総務は「大規模な増税が行われ、国の債務が何兆ドルも増えるのであれば、それはあり得ない」と述べた。また、増税により「労働者が急速な回復を必要としている時に雇用を殺し、賃金の伸びを鈍化させる」ことになると指摘した。
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バイデン氏は少なくとも当面は、個人富裕層への増税という選挙公約を無視し、最高限界税率やキャピタルゲイン税の引き上げは行わない。
ホワイトハウスが発表したブリーフィングペーパーによると、今回の計画では、法人税率を21%から28%に引き上げ、企業が利益を海外に移すことを可能にする抜け道をふさぐために税制を変更する。
バイデン氏は、富裕層を「標的」にするのではなく、パンデミックによって悪化した分断と不平等に対処することが目的だと説明した。
政権高官によると、計画では、プロジェクトの費用を8年間に分散し、長期的に国の債務を増やすことなく、15年間で全ての費用を賄うことを目指すという。
全米商工会議所のニール・ブラッドリー副会頭兼最高政策責任者(CPO)は、インフラ刷新が急務であるというバイデン氏の考えには同調するとした上で、同氏の計画は「危険なほど見当違いだ」と指摘。
「インフラ計画の目標と正反対に景気回復を遅らせ、米国の国際競争力を低下させる増税に強く反対する」と述べた。
インフラ計画では、道路や橋、高速道路、港湾などインフラ再整備向けに6210億ドルを充てる。また、電気自動車市場への投資に1740億ドルを振り向け、2030年までに全国的な充電網を構築することを目指す。
このほか、高齢者や障害者向けの手頃な価格の地域密着型介護サービスの拡充に4000億ドルを充て、非白人の女性が多い同業界の労働者が「低賃金で過小評価されている」問題に対処する。
低所得者向け住宅の建設・改修には2130億ドルを投じる。製造業の支援や電力網の刷新、全国的な高速ブロードバンド導入、水道システムの刷新にも数千億ドルを充てる。
今回のインフラ計画は、バイデン政権が掲げる「ビルド・バック・ベター(より良き再建)」計画の第1弾で、数週間後に第2弾が発表される予定だ。
第2弾には、医療保険制度の拡充や児童手当の延長など家計向けの対策が盛り込まれる見込み。さらに2兆ドル規模の財源が必要になる可能性がある。
*内容を追加しました。
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