「上海閥」の汚職取締り強化、前総書記の息子に及ぶ勢い

2006/09/29
更新: 2006/09/29

上海市労働社会保障局の不正融資事件などに関連して、上海市のトップ、陳良宇・同市党委員会書記を解任したのに続き、党中央規律検査委員会は陳氏と関係の深い同市局長、副局長クラスの幹部約20人を拘束したという。中国公安部の官僚が匿名で提供した情報によれば、事件に絡んだとして陳良宇氏と黄菊副首相(党中央政治局常務委員)両氏の夫人が軟禁されたという。「上海派閥」を一掃するための本格的な取り調べが始めた模様だ。また、この幹部によると、江沢民前総書記の息子・江綿恒氏もさらに巨額の不正流用に関与しているとの疑いが持たれているため、次なる厳罰目標になる可能性が非常に高いという。一連の大型汚職案件の行方が注目される中、中国当局内部の権力闘争が徐々に表面化する様相を呈してきた。

陳良宇氏と黄菊副首相は、党最高幹部の政治局員で、江沢民・前総書記が率いる「上海閥」の重要人物である。公安部のある官僚によると、中国公安部が各地の公安局に伝達した内部通報で、陳氏と黄氏両者の妻がともに、「双規」されたという。「双規」は、犯罪の疑いがある中共幹部や、その犯罪に絡む関係者などの身柄を規定された所に拘束し、外部と完全に隔離して規定された期間内に犯罪事実を供述させる取調べ方法。内情を知る者や、被害者らは被疑者の権力に恐れることなく、証言や、情報提供できるため、汚職関係者がもっとも恐れる調査手段であるという。現時点において、この情報はまだ公表されていない。公安幹部は、胡総書記は来年の党大会を前に、江沢民前総書記の側近や、息子から着手し、江氏が率いる「上海派閥」を党内から排除することと、胡錦濤政権の基盤強化を図ろうとしているとの見方を示した。

また、両氏の夫人が不正流用した資金は約30億元(日本円で450億円相当)に上り、黄菊副首相の夫人の許慧文氏は主犯格だという。

「上海閥」の汚職取り締まりが進む中、大きく注目されているのが、江沢民前総書記の息子・江綿恒氏。同氏は、1999年11月から中国科学院の副院長の座についた。1994年から、国有企業・上海聯合投資公司の法人代表となり、同会社を事実上私物化し、中国で「電信王国」を構築する目標に向けて動き出した。その会社を通して、電信、ハイテク、航空工業、自動車産業などの分野に次々と投資。そのほとんどは、国有銀行による巨額の融資である。2001年には、上海聯合投資公司のグループ会社が十数社に拡大、同氏は中国電信産業の大手・中国網絡通信有限公司(略称、CNC)を含む7社の理事会の副理事長を務めている。特に電信大手CNC社の結成がもっとも顕著に江沢民前総書記の息子としての優越性を物語っている。当時、江沢民が自ら命令を下し、中国の電信事業を地域分割し、二つの国有企業、「北方電信公司」と「南方電信公司」に区分けした。後に北方電信公司が息子の江綿恒氏の「網絡通信」社と合併させられ、電信大手のCNC社が結成され、江綿恒氏がCNC社の副理事長の座についた。その結果、国有企業・北方電信公司が保有する全国十の省にある固定資産がCNC社の懐に流れた。

「上海閥」の重鎮である江沢民前総書記、その息子と解任された陳良宇・同市の元党委員会書記との裏の関係はどのように暴かれるのかが注目の的となっている。中国当局は26日、陳良宇・市党委書記の解任につながった汚職事件で、汚職問題の真相を究明するとともに、社会地位を問わず関与した全員を追及する方針を示した。

一方、10月8日から11日まで北京市内で開催される予定の中国共産党第16期中央委員会第6回全体会議(6中全会)では、胡錦涛・党中央総書記が議長を務める。中国当局の報道機関・新華社は27日付けの報道の中で、既に提出済みの「中国共産党中央の社会主義及び調和ある社会の建設における若干の重大な問題に関する決定」を修正した上、審議に出し、採択する予定と伝えた。

香港紙・経済日報と星島日報などの報道によると、「上海閥」が絡むこの汚職事件に関与した中共幹部とその関係者の逃亡を防ぐため、特別警察隊が上海の空港や、港に配置されているという。

米国の中国問題研究者・石蔵山氏は、江沢民前総書記の側近「上海閥」の汚職を取り締まる動きは、政権内部の権力闘争であるとの見解を示し、「政権に噛り付き、権力を離さない江沢民がもっとも恐れているのは、7年間も続いた法輪功への集団弾圧の責任を追及されることであり、結局、江沢民は事実上、権力を離そうとしても、離せない状況に追い込まれている」との見方を述べた。