【大紀元日本10月10日】10月10日の国慶節を目前にして、施明徳・元民進党主席の率いる“反腐敗・陳水扁追放運動”(正式名称:反貪倒扁運動)が盛り上がりを見せている。本格的な“座り込み行動”が始まってから1ヶ月目の10月8日、賛同する市民らの陣取る台北駅脇の会場を覗いた。
晴天に恵まれ、日曜日であるにもかかわらず、人が集まり「運動」らしくなり始めたのは、日差しが弱まり始めた午後4時ごろ。午後3時ごろまでは、通りを挟んだ向こう側のイベント会場で、数百名の少年少女が台湾版“少年隊”におくる甲高い声援に圧倒されていた。
巨大なモニターやステージの敷設された会場に集うのは、シンボル色である赤い衣装、もしくはリボンや鉢巻などを身につけた老若男女。時折り主宰団体である「反貪倒扁運動総部」の幹部が演説を行い気勢をあげ、「陳水扁追放の歌」等の合唱もあるが、週7日夜遅くまでの長丁場であるため、倦怠感も見え隠れする。
会場では演説者が陳総統や親族の腐敗を徹底的に糾弾、節目節目で音頭が取られ、親指を下に向けて『下台、下台(退陣、退陣)!!』が連呼される。民主、主権在民などのフレーズも頻繁に登場、退陣しないこと自体が民主主義の否定であると、批判の矛先は鋭い。
周辺で待機の警察官、Tシャツ・帽子など「陳水扁辞めろ!」グッズの売り子らや報道陣を含め、三百名はいないと思われた会場も、運動のリーダーである施明徳氏が登場した5時ごろから雰囲気が一変。緊張感の舞い戻った会場で、氏の談話やインタビュー、幹部の演説と続いた。
メリハリを取り戻し、報道カメラが慌しく回る会場の外で、通りすがりの市民に訊いてみた。「俺には関係ないね。」と窓越しに話したタクシーの運転手。「あいつらは国民党のまわしものさ。あいつら(大陸からきた)中国人とは違いすぎる。みんな迷惑しているよ。」というのは貿易業を営む林氏。他おしなべて冷ややかな声が多かった。
メディアは熱心な報道を行った。10月9日朝、陳水扁総統を天敵とする“国民党”に近いといわれる『聨合報』は社説におき「成熟し多様性と自発性を備えた民衆を見た」「公民意識の昇華が、今回の運動の最高の資産」と運動を絶賛。返す刀で、経済、政治、外交全面破綻でまだ辞めない、と漫画で陳総統を風刺。
同じく主要紙の『中国時報』は、冷静さを装い現状を分析。いわく、執行部内での支持も堅固、スキャンダルに関する司法調査でも有罪が証明された訳でもない等、居座る根拠ありと。
報道によると、施明徳氏は当日記者会見におき、立法院に再提出される罷免決議案が成立した場合、運動は解散する旨を発表。だが陳総統退陣の実現までは徹底抗戦の方針であり、国慶節式典では、会場となる総督府の包囲を予定。式典中の陳総統の談話に、運動に対する回答が見出せない場合は、式典終了後も市民による包囲を続ける可能性もあるという。
前回9月のデモの際には、8万人以上の市民が集まった。暴力を伴わない包囲行動が前提ではあるが、不測の事態を憂慮する台湾大学、政治大学、台湾師範大学は、すでに式典への学生の参加を見送る決定を下し、陳総統自身も、参加を取りやめる可能性があるという。陳総統が万が一衝突に巻き込まれた場合の安全の確保、国家としての体面の問題の他、警備をする上で暴徒と民衆の区別がつかない点が考慮されている模様だ。
実は座り込み会場の脇には、色が赤い故に“運動を敵視する暴徒”に襲われ、破壊されたというフォード車がトラックに載った状態で陳列されていた。主宰団体によると、窓ガラスが殆んど叩き割られた車は、暴力の象徴として展示されているという。今回会場にて最も印象を受けたのが、参加者らの明るさや屈託のない笑顔だった。銃で撃たれた総統の美しいとは言えない腹部などを含め、暴力の痕跡が再びテレビ映像に登場しないことを祈るばかりだ。
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