【大紀元日本12月3日】NPO法人・北朝鮮難民救援基金と在タイ国カチン女性協会(KWAT)が2日正午、東京東麻布・中国大使館前で抗議行動を行った。同基金会は中国東北部を始め中国全土に散らばる脱北者を無慈悲に強制北送している中国政府に対し、国際難民救援法に基づき人道的措置を採るよう要求しているが、一向に改善のきざしが見られないという。また、カチン女性協会は、ビルマ軍事政権圧政下で貧しい生活を強いられたカチンの女性が中国国内で人身売買の被害を受けている惨状を訴えた。中国の人権問題で繋がるNGOの呼びかけは、北京五輪を目前に国際社会で強まる様相を見せており、融和ムードにある日本の対中外交姿勢に警鐘を鳴らしている。
中国現地での活動中に8ヶ月間拘束された経験を持ち、脱北者の人道支援を行っている北朝鮮難民救援基金の日本人人権活動家の野口孝之氏は、「本活動は、米国の北系NGOと連携しながら、国際的に行っている。われわれは、定期的に中国大使館前でこのような抗議行動を行っているが、中国政府の脱北者に対する取り扱い、人権状況は全く改善の兆しがない。外務省など日本政府の対応も、小泉政権から安部政権に変遷したものの、全くこれに触れようとしない」と切々と訴えた。
中国大使館前で抗議するカチン女性協会のメンバー
在タイ国カチン女性協会の女性活動家は、「現在ビルマ北部のカチン州で、カチン人女性が人身売買の被害に遭っているが、中国政府はこれを看過している。中国領内に入ったカチン人女性の人権を保護して欲しい」と訴える。ビルマ北部のカチン州では、男性たちが中央の軍事政権に弾圧された上に、「中国領内で稼げる仕事がある」との甘言でカチン人女性が騙され、中国領内に売り飛ばされマッサージ・パーラーなどで性的な搾取に遭っているという。当協会の人権報告書によると、人身売買で中国領内に入ったカチン人女性は、杭州、湖南、南京、北京、長春などほぼ中国全土に渡っている。
北京五輪を控える中国は、これら人権NGO団体の国際的な活動の抗議にどう応えていくのか。同国は、国際社会から報道統制や人権問題など指弾される問題を抱えながら、経済利益外交で批判を封じ、民間に対しては文化交流と称して親中イメージの形成に取り組んでいるが、五輪開催期日が迫るにつれ人権問題の棚上げに批判が強まるのは避けられない状況だ。また、現在、中国と融和ムードにある安倍政権は、自由・民主主義・人権・法の支配という四つの普遍的価値観をアジアや世界に広める外交姿勢を打ち出しているだけに、アジアの経済大国に台頭しつつある中国の人権問題について日本政府としての対応が注目される。
※ビルマ・カチン州は1994年までビルマ軍事独裁政権と内戦状態にあったが、休戦後も軍隊による暴力・暴行が横行し、現地住民の強制労働や、軍事独裁政権と結託した中国商人による資源の独占、中国の農村へ女性たちが売られる人身売買などが問題になっている。日本には、政治難民やビルマの民主化を求める活動家など、数百人のカチン族が住んでいる(在タイ国カチン女性協会http://www.burmainfo.org/kachin/kwat.htmlより)。