中国・土地私有化:台湾の経験に倣えるのか

2007/02/09
更新: 2007/02/09

【大紀元日本2月9日】中国ではここ数年、都市部と農村との格差や貧富の差が急激に拡大しており、胡錦涛政権は、「調和社会」「社会主義新農村の建設」をスローガンにいわゆる中国三農問題の解決を図ろうとしている。学識者は、中国は台湾における土地改革の経験を学び、土地を農民に分け与えるべきと主張する。しかし一方、中国大陸の農村は、そのまま台湾の経験に倣うことができないと指摘する専門家もいる。VOAの東方・記者が報じた。

中国の『書屋』誌に掲載されたジャーナリスト・黄明英氏の文章では、台湾の農村建設経験から多くの啓発を与えられたと言及している。黄氏は、中国を含む所謂発展途中国のほとんどは、都市部では目覚しい経済成長を遂げているに対して、農村部での経済発展はかなり遅れているという「両極性社会」現象が生じていると示している。同氏は、もし中国都市部と農村との格差を縮小し、農村生活を改善し農業改革を行なわなければ、中国は必ず「断裂社会」となると指摘した。

台湾の土地改革

専門家によると、台湾での土地改革には三段階あった。第一段階は、「375減租」と呼ばれる税収制度で、農耕地にかかる租税は年間農作物生産高の37.5%を越えないように設定された。第二段階は「耕地払い下げ」で、国民党が旧日本統治領の当時の耕地21・6%という広大な田畑を一般農民に払い下げた。貰い受けた農民は十年間かけて土地の代金を支払った後、土地を所有することができるとした。第三段階は孫文が唱えた「全ての農民に土地を」の実施だった。政府は地主が所有できる土地の最高限度面積を規定し、定めた面積を超えた部分をその他の農民に与えた。台湾が実行した土地改革は、農村地区の建設ばかりでなく、台湾経済の躍進においても基礎的な力となった。

土地を農民に分け与えよ

米国の中国問題ウォッチャー・李大力氏は、博訊ネットに文章を発表し、「中国共産党は台湾の経験に学び、第二次土地改革を推進し、土地を農民に与えるべきだ」とし、また「数千年以来、中国はずっと農業を中心産業としきた。現在、中国の農民人口は全人口の約80%を占めている。もし、中国農民の基本生活条件を満たさなければ、中国政治は危機に陥るだろう」との認識を示した。

「調和社会」を破壊したのは一体誰なのか

胡錦涛政権は、中国の格差社会を是正するため、「調和社会を建設せよ」というスローガンを打ち出しているが、李氏によると、中国は早くからすでに調和しており、それを破壊したのは中国共産党自身であるという。李氏は文章の中で、「数千年以来、封建社会において無為を持って治めるというスタンスで行政を行なわれてきた。中央政府が管轄する最小単位は県(中国の県は日本の市より小さく、郡や町に当たる)だけで、一つの県に県長或いは県官吏1人だけ赴任させた。県長以下の役人は県長が自ら招聘した。ところが今現在の共産党はどうでしょうか?一県だけで、公務員の人数が数万人以上に上り、警察や軍隊まで大勢駐屯している」と批判した。

「民間自治」の方が優る

李氏は文章の中で、「過去において、県以下の行政に関しては民間自治が基本であった。県政府は各郷村を管理するにおいて、地方の族長や人々に尊敬されている識者に頼っていた。族長や識者たちは朝廷から指令を受けることがなく、国家の俸禄を食むこともなく、世襲に頼らず、政府の代わりに伝統的な礼法作法または代々受け継ぐ家訓、各郷村が定めた規則を基準に、中華民族の道徳倫理と生活秩序を厳しく守っていたからである。そのため、政権が交代しても、こういった生活様式は変わらなかった。近代まで中国農村では、伝統を堅守し、黙々と農作業に励み、収穫した農作物を政府に納め、生活を楽しみ、訴訟事を解決し、各階級がよく睦み、早くから調和した社会を実現していたのである。問題があったのは、働かずに生活を成り立たせようとした村の不良の者だ。しかし、これらの者たちは、強大な伝統道徳や民間のしきたりを受け継ぐ民衆の下で、数千年来も封じ込められてきた。ところが、近代に至り共産党によってこれら無頼の輩を革命分子として世に出してしまったため、働かずして食うことが革命行為になってしまった。外敵が侵入して内戦が止まず、無頼の輩は千載一隅の機会とみて暴れ回り、武力によって政権を奪取し、社会の命脈が絶たれ、倫理道徳が破壊された」と述べた。

現在の中国農村幹部とは、どういった人なのか

李氏は中国三農問題を根本的に解決するには、土地を農民に分け与え、これを所有させることだと強調した。しかし、雑誌「現代中国研究」の編集者・程暁農氏の分析によると、中国の現況ではそれは実現不可能に近いという。程氏は「まずは農村幹部と農民との関係に問題である。現在中国農村幹部は、中国土地改革時期に積極的に行動した革命分子の末裔だ。当時土地改革に参加した革命分子のほとんどは、農村中の無頼漢や怠け者であった。毛沢東が土地改革を行なった目的は土地を分けるだけではなかった。実は、農村で下克上を実現することによって、無頼の輩に実権を握らせ、有能な中流農家や富裕農家を打倒し、過去バランスが良くとれた農村社会構造を壊すのが一番大きな目的であった。このような状況下で、もし共産党が行なった土地改革について再評価するとすれば、中国の農村では過去のように下克上が再演されるだろう。さらに、その時代にあれら農村の有能で優秀な人々とその子孫がすでに打倒されて、もういないのだ」と話した。

「土地の所有者を打倒して、土地を分けよう」は単なる共産党のスローガンと手段に過ぎない

程氏の分析によると、中国農村の問題は単に土地の分配だけではないという。程氏は、「中国共産党の『土地の所有者を打倒して、土地を分けよう』というのはスローガンにしかすぎず、毛沢東の土地分配は単なる共産主義を地方に広めるためのひとつの手段だった。農村の無頼の輩を共産党の基層幹部にし、共産主義社会の基礎と成らせた。外部圧力がなければ、彼らは共産党を批判することがないだろう。これは今現在中国に存在する太子党(特権階級の子女を指す)と同じだ。既得権益層の太子党がいなかったら、中国での事情は大きく変わっていたはずだ。外部政治圧力以外に、この人たちが存在し特権さえ握っていれば、彼たちが自分たちの父親世代を非難することはないだろう。基層幹部となったあれらの無頼の輩も同じである」と土地私有化の実行が難しいとの認識を示した。

中国の農民の「蛇の生殺し」

程氏は中国政府が三農問題の解決に関して、少しも土地分配問題を解決しようとしなく、ただできれば農村問題を「安定」させようと試みていると指摘した。その結果、中国の農民は一種「蛇の生殺し」のような状態に陥っている。だから、中国の農民が「三十年」「五十年」の単位で国から土地を借りて請け負っているが、中共は依然に農民の土地私有化に足を踏み出すのを嫌がっているようだ。