富人と農民工、メディア規制

2007/04/07
更新: 2007/04/07

【大紀元日本4月7日】四月になってNHKのテレビ番組に現在の中国人の生活と中国メディアを紹介する2回にわたる特別番組があった。NHKもあまり中国北京電視台並みの報道にこだわると視聴者の反発を招くと判断したのであろう。何でも一日に一億円も儲けるという精力的な実業家の姿と職を求める無名の農民工の話が対象的であった。勿論、その実業家も始めは徒手空拳から始めたのであろうし、贅を尽くした豪邸の壁に_deng_小平の肖像画が掛けられているのも印象的ではあったが、なんでも毎年百人を超える新しい億万長者が登場するそうだ。凄まじい発展振りである。一方、数億とも云われる農民工については職を求める農民の数が多いためか、なかなか仕事が見つからぬ悲惨な状況には身をつまされる思いがした。中国人には元々商才に長けた人も多いし、単純に巨富を得たから、けしからんと言う御粗末な発想は避けたいが、革命以来どれほどの産業資本家、富農が悲惨な運命を辿ったかを想起すると今更の様に複雑な気持ちになる。一方、メディアの方は,当局の厳しい規制に喘ぎながらも真実を伝えようとする記者達の姿を追ったものである。中央宣伝部の厳しい検閲や妨害を受けながら記者としての見識を発揮するのが如何にむつかしいかを淡々と報道する番組であった。

あの南巡講話に象徴される故_deng_小平氏の「豊かになれるものから豊かになれば良い」という言葉を錦の御旗にしてから僅か四半世紀程で世界の工場とまで喧伝される成長を遂げた光の裏側で、矛盾がここまで深刻化しているのなら大変な事態である。社会主義どころか資本主義の弊害が一挙に表面化してしまったというのが実態であろう。正しく曹松の詩句にある「一将功なりて万骨枯る」ではないか。これこそ社会制度の歪のあらわれであろう。貧富の差がここまで極端な形で発生するとすれば、これは文字通り社会問題以外の何物でもない。貧富の差もある程度は止むを得まいが、格差が何十倍、何百倍ともなると別の問題になるのは自明であろう。

現代は情報社会である。中国とて例外ではない。マスコミは中国共産党の宣伝、宣撫の手段なのかも知れないが、書籍や刊行物への禁書や発禁がそれ程までに多いのであれば始皇帝の焚書坑儒と何等変わりはあるまい。インターネットへの制限の厳しさにも定評があるが、

文化大革命や大躍進からサーズという伝染病まで情報を封印したり規制するとなれば、為政者つまり本来中国人民に奉仕する筈の中国共産党がいつの間にか己の愚行を隠し、明の洪武帝の悪名高い東廠や錦衣衛と何等異ならぬ弾圧、恐怖政治を敷いていることになる。勿論、自由主義諸国のマスコミにも結構いい加減なものもあり、人間の劣情をそそり、あるいは有名人の醜聞を鬼の首でもとったように報道したり、間違った特権意識にとらわれ、その実インテリヤクザに等しい不逞の輩も数多く、マスコミの尊厳を傷つける手合も少なくはない。流言蜚語の類が社会を混乱させるのは避けるべきではあるが、それに名を借り当局に都合の悪い情報を封鎖管理するとなれば、別の意味で民衆にとっては二次災害となるのは自明である。中国当局の情報統制の時代錯誤には暗澹とさせられた。建国以来60年近くが過ぎた。換言すれば人間の一生にも相当するだけの時間が経過した。当初は全てが、ないない尽くしに等しい状況であったことは想像に難くないが、さりとて、太宗を占める9億の農民の生活は、その間どのように改善したのであろうか。鼓腹撃壌とまでは行かずとも、ある程度の生活の改善が進んだと本当に云い得るのだろうか。子供が誘拐されたり、貧困による人身売買が横行し、農民の抗議活動が頻発しながら、臭いものに蓋をする中央政府や地方人民政府の態度は、昔から何も変わっていないのか。歴代王朝のなかでも長期間続いた諸帝国と比べても,例えば唐の場合なら時期としては先ず盛唐に相当する時期なのに、貪官汚吏の弊害は凄まじく、農民や労働者の騒動が年間8万件を超えるに至っては既に末期症状ではないか。拝金主義が跋扈し、貴重な人民の資産である国営企業が捨て値で処分され、当局と得体の知れぬ人達が巨利を博し、その一方で不当な価格で土地を収用された農民の騒動が後を絶たないのは、最早中国共産党が、立党の精神から逸脱し、以前鉄の規律を誇った筈の組織が事実上壊死している証拠ではなかろうか。遅ればせながら和諧社会なる主張を始めたものの、依然として抜本策は講じられず、むしろ糊塗する政策に終始し、現実との矛盾は、当分解消されそうにない。最早、為政者としての共産党独裁に終止符を打つべき時期に入ったのではなかろうか。最近の全人代で物件法が施行されたそうであるが、恐らくは個人の所得税を含め未だ税法を含めた各種法律の整備が遅々として進まず、法治ではなく縁故による人治が優先する社会、その故にこそ、その間隙をぬって、巨富を得る人達も増えているのであろう。中国共産党が独裁に固執する一方、人民解放軍,地方人民政府すら満足に統制出来ない状況に陥っているのではなかろうか。勿論、大樹だけに簡単には倒れはしないだろうが、60百万人を超えるという人類史上空前の政治組織も既に脱党者が20百万人に及ぶとすれば、最早、中国共産党の命運は旦夕に迫っているのではなかろうか。唐でいえば初唐から一挙に晩唐に向かっているに等しい。せめて朱全忠のような簒奪者や乱世の梟雄達が出ぬことを祈りたい。中国の歴史の中で大帝国の崩壊は常に民衆に大きな惨害を与えた。春秋戦国の世から、三国時代、五胡十六国、五代十国の類である。その間に発生した農民の蜂起も数知れない。その犠牲者はいつも民衆であった。中国の主人公は飽く迄中国の民衆である。共産党はその忠実な僕であった筈なのに。僅か60年で地大物博の大地を人口爆発と公害で汚染し、戦時でもない時期に数千万の犠牲者を出しながら古色蒼然とした共産党独裁のドグマに固執すれば中国共産党は人類全体の災厄となろう。強大な軍備と世界最大の兵力を持つ人民解放軍の将領も、万が一にも党の狗にならず、中国人民に服務する本来の建軍の精神に戻り戦火を交える事無く厳正に中立を守り無血の中国民主化に貢献して欲しいものである。そうしてこそ衛星破壊兵器や原子力空母よりはるかに人類全体に評果される真の王師となろう。