中国経済の奇跡、インフレで終結に向かうか

2010/12/01
更新: 2010/12/01

【大紀元日本12月1日】中国ではこのほど、コメ、豚肉、卵、日常生活に欠かせない食料から、水道、電気、ガス、ガソリンなど物価が急騰している。国務院は最近、「国16条」と呼ばれるインフル抑制の様々な措置を発表し、物価の高騰を抑える決意を示した。しかし、現時点では、抑制策の効果は見えておらず、中国のインフル状況は依然厳しい。米VOA中国語サイト24日の記事によると、インフレは簡単な物価問題ではなく、中国経済にとって、その影響は広範で、経済成長のスピードを急速に鈍化させると一部の専門家は見ている。

同記事によると、10月の消費者物価指数(CPI)は4.4%に対して、11月はさらに上昇して4.8%に達すると香港の経済学者が予測している。止まらないインフレの上昇トレンドに迫られ、中国政府は来月に開催予定の中央経済工作会議で、現在の目標インフル率の3%から4%に上げざるをえないと一部のアナリストが見ている。

今年、中国政府はすでに5回にわたって銀行準備金率を引き上げ、利上げを一回行い、主要食品価格の一部を凍結した。

専門家:問題の根本に触れていない

中国政府が今回打ち出したインフレ抑制の努力について、多くの専門家は楽観視していない。

北京大学中国マクロ経済研究センター研究員・黃益平氏は、VOAに発表した評論文の中で国務院が発布した「国16条」に驚いたとコメントしている。「国16条」を読んだところ、まるで80年代に戻ったようだという。1985年と1988年のCPI指數はいずれも10%を超えていた。当時、政府も物価抑制策を講じたが、インフレの急増を防げなかったと同氏は振り返った。

在米の中国経済評論員・章家敦氏がVOAに、中国政府の抑制処置に否定的な見方を示している。「大きな效果にならないだろう。北京政権は過去にも何度も同じような行政手段を講じたが、いずれも何の効果もなかった。人々はさまざまな便法で抑制策を逃れる。実際のところ、中国以外の国でも物価抑制策はうまいやり方ではない」と話した。

一方、清華大学経済管理学院の程致宇(Patrick Chovanec)副教授はブルームバーグの取材に、北京当局は問題の根本に触れていないと指摘した。世界経済衰退発生後、中国は経済に対し大量の貸付と現金を注入した。程氏に言わせれば、まるで「火山口に座っているようだ」。

中国の経済神話は終結か

インフレ問題の爆発について、米国金融専門家クリス・ストリート(Chriss Street)氏に言わせれば、三尺の凍土は一日の寒さでできたものではない。経済繁栄の拡張につれて、中国の「尽きることのない」廉価な労働力がすでに極限に達した。労働者不足問題は企業に賃金及び福利の上昇を迫り、消費者物価の上昇を引き起こした。そのうち、食品価格の上昇率は最も著しく、今年はすでに11%に達している。

70億米ドルの投資基金マネージャーであるストリート氏は、最近発表したある記事で、廉価な労働力と過小化された為替レートは中国経済モデルを成功させた主要因だが、この二つの要因とも、インフレによって変化するだろうと述べている。

つまり、インフレ抑制のためには、中国貨幣当局は人民元レートを上げざるを得ない。専門家の計算では、人民元が10%上がるごとに、中国の加工輸出業の輸出は17%減少する。中国の現在の失業人口は3360万だが、かりに人民元レートを10%から40%に上げれば、中国の失業人口は更に4000万から1億6千万人増える。

インフレの上昇につれて、廉価な労働力と人民元レートで保った中国経済の優位は失われ、中国経済の奇跡も自然に終結する、とストリート氏は結論を結んだ。

貿易政策は経済成長を脅かすか

一方、中国経済を長年研究している米国の専門家、米国工商理事會(USBIC)上級研究員アラン•トネルソン(Alan Tonelson)氏のインフレに対する見方は違っている。インフレ抑制の失敗は労働力コスト及び就業に影響するが、現在の物価上昇、特に食品価格の上昇は需要供給に起因し、貨幣の問題ではないと同氏は考える。

トネルソン氏はVOAに対して、中国経済の成長にもう一つ大きな脅威が存在している。それは中国の貿易政策だ。

「私に言わせれば、中国経済成長モデルが直面する最大の脅威は中国の掠奪的な貿易政策である。この点について中国指導者層は認めたがらないが、為替レートを人為的に抑えこむやり方や、様々な輸出補助金と貿易障壁などで多くの国家の経済成長を奪い取っている。これはすでに中国の輸出マーケットに脅威を与えている」

トネルソン氏は、世界の金融秩序の安定と世界貿易体制の正常な運営を維持するためには、中国指導者が一部経済成長を犠牲にしなければならないと認識すべきであると指摘した。残念なことに、中国の政治制度は非常に硬直化しており、経済成長のスピードダウンは国內の政治動乱を引き起こすリスクがあるだろうと同氏は考える。

(翻訳編集・趙莫迦)