【大紀元日本7月29日】北京五輪の芸術顧問を務める米ハリウッドの有名映画監督スピルバーグ氏は、中国当局がスーダンのダルフール地区でのジェノサイド犯罪の解決に協力しなければ、芸術顧問から降りる可能性があるという。同監督のスポークスマンが26日、米放送局ABCニュースを通して表明した。
ABCの報道によると、中国当局がアフリカのダルフール地区でジェノサイド(大量虐殺)の人道に反する罪を犯したスーダン政権を支援しているため、北京五輪に対して国際社会から多くの批判があった。その圧力を受け、スピルバーグ監督は、北京五輪の芸術顧問を辞任する可能性を示唆した。中国当局が今後数日間のうちに公表すると思われるスーダン問題に関する声明文をみてから結論を出すという。
スピルバーグ監督のスポークスマン、アンディ・スパン氏は先日ABCに対して、同監督はスーダン問題について、すでに中国当局と「非公開の対話」を交わしてあり、近いうちに中国当局から回答が届くはずと説明した。
長期にわたり、中国当局はスーダンの石油産業の主要投資国として、自国のエネルギー需要を満たすために、ダルフール地区でのジェノサイド罪を犯したスーダン政権を支援し、国連平和維持部隊の現地への派遣に反対し続けてきた。そのため、国際人権問題の関係者は、中国当局がオリンピックを主催する資格について質疑し続けている。人権団体は、中国当局がスーダンに武器を販売、これらの武器はダルフールでの大量虐殺に使われていると非難し続けている。
スピルバーグ監督が昨年10月に北京五輪の芸術顧問を承諾した後、外部から多くの非難を受けた。今年3月、ハリウッドの女優ミア・ファローは米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、「ジェノサイド虐殺のオリンピック」と題する文章を発表、北京五輪を批判した。
ファローさんは同文章の中で、北京五輪を協力したスピルバーグに対して、「北京のためのイメージ宣伝を考案すると同時に、中国当局がスーダンでのジェノサイド虐殺に資金援助しているのを知っているのか」と質疑し、「シンドラー・リスト」を監督した同氏を、ヒトラーに支持され、ナチスが主催する1936年のベルリン・オリンピックの撮影プロデューサーを務めたレニ・リーフェンシュタール氏に例えて、「スピルバーグ監督は果たして、北京五輪のレニ・リーフェンシュタールになりたいのか」と批判した。
同監督は本年5月、中国の胡錦濤・国家主席に書簡を提出し、中国当局に対し、スーダン政権に圧力をかけ、国連平和維持部隊の受け入れるよう求めた。
この手紙の直後、これまでアフリカ諸国に対する「内政不干渉」を原則としてきた中国当局は、外務官をスーダンに派遣し、難民キャンプを視察させる対応を取った。
中国当局の異例の対応に驚いたファローさんは最近、米NPRラジオ局に対して、「明らかに、中国は北京五輪の成功をスーダンの石油よりも重要視している」と話した。
ダルフール難民キャンプで食事する子供(Getty Images)
エール大学グローバリゼーション研究センターの出版関係責任者ナヤン・チャヤ氏はABCニュースに対し「中国は北京五輪に300~400億ドルを使っている。北京五輪の成功は中国当局にとって非常に重要である。それは中国を世界の強国として見せるお披露目パーティのようなものだ」と述べ、「89年の天安門虐殺事件以来、中国は世界での活動範囲はある程度の制限を受けている。中国当局は北京五輪を通して天安門虐殺事件の陰を完全に払拭しようとしている」と指摘した。
チャヤ氏によると、エネルギーか、五輪か、中国にとっては難しい選択である。「中国は一方、北京五輪を無事に成功できると望んでいる。一方、アフリカのエネルギー保障も放棄したくない。更に、スーダンを放棄したら、発展途中国での自らの地位も心配している」という。
先月、中国当局はアフリカの貿易と投資を促進ために10億ドルの基金を設立すると宣言した。中国のアフリカでのエネルギー外交は現代版殖民地主義であるとの批判の声が再び上がっている。
1989年、スーダンでバシール政権が執政し始め、イスラム原理主義を推奨し、キリスト教を信仰する黒人への差別と迫害を開始した。そのため、スーダン西部のダルフール地方で、スーダン政府の支援を受けているアラブ人の武装勢力と、地域の非アラブ系黒人との間に民族紛争が発生し、現在も進行している。
2006年2月時点ですでに約18万人が殺害され、2004年6月3日の国連事務総長の公式統括(bilan officiel)によれば、200万人の死者、400万人の家を追われた者、60万人の難民が発生しているという。
2004年7月23日に、アメリカ上院および下院は、スーダンのダルフール地域の武力紛争をジェノサイドであると宣言した。
一方、スーダンはいま、中国当局の主要石油供給国となっている。スーダンでの石油開発により、中国は中東への石油依存から徐々に脱却できた。そのため、スーダン政権による自国への制御が、中国当局にとって、エネルギー供給を確保する重要不可欠な条件であり、スーダン政権も、日々孤立する国際舞台で応対してくれる中国当局の支持を必要としている。
そのような状況において、中国当局はここ2年、欧米諸国によるダルフール問題への介入を絶えず阻止し、スーダン政権への制裁や、国連平和維持部隊の派遣には、反対し続け、国連安保理の表決で棄権票を投じ続けた。また、スーダン政権には大量の資金・物質援助を提供、ジェノサイド犯罪を支援している。国際人権問題の専門家は、「中国当局による『輸血』(支援)があるため、スーダン政権が長い間国際圧力に対抗し続け、強硬な立場を堅持できた」と分析している。
中国製戦車の前で記念撮影するスーダン政府軍の兵士(Getty Images)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。