【大紀元日本9月16日】中国北京市はこのほど、中国各地の陳情者が寝泊りする、いわゆる「上訪村」(北京市内豊台区)の撤去を決定した。これに対し、米国の国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は6日、北京市政府に対し、撤去決定の取り下げを求めた。この撤去により、合わせて4千人あまりが影響を受けるという。
HRWの報告によると、中国当局は8月末、「上訪村」の滞在者を対象に、9月19日正午までに退去することを命じる通達を下した。補償金の支給や、移転先については、
北京市豊台地区からの退去を命じる広告(HRWより)
全く触れられていなかったという。
同人権団体は、中国当局に対し、この決定を即座に取り下げるよう求めている。北京豊台区の「上訪村」は地方政権の汚職や、自ら受けた迫害などを中央政府に訴えるため、中国各地から集まった陳情者たちが寝泊りする場所であり、現在約4千人あまりが住んでいるという。
香港の中文大学法学部教授マイケル・デイビス氏によると、法律体制が整っていない中国では、民衆が行政府に苦情を訴える「上訪」という昔からの形式が残されてきたという。しかし、実際に中国当局が陳情者の声を聞くかどうかは疑問であり、「上訪制度」はあまり効力がないと分析している。デイビス氏は、「上訪」で問題を解決した陳情者はほとんどいないが、「上訪村」を撤去するのは、陳情者に残されたわずかな権利を剥奪することであり、それは望ましくないとの見解を示した。
ここ数年間、上訴し続けてきた陳恩絹さんは、「陳情者の大半は、数年間、上訴し続けているために経済条件がとても厳しく、旅館などの宿泊施設に泊るのは無理。彼らは上訪村で寝る場所を探すが、見つけられなければ街頭で寝泊りするしかない。そのため、北京の治安や、イメージにはよくない。もし、北京市政府が簡易な宿泊所を造り、家賃を下げれば問題は解決できる。しかし、上訪村を撤去し、その後のことは知らないとなれば、陳情者に大きな影響がある」と話した。