四川大地震:中国地震局、専門家の予報を無視

2008/05/17
更新: 2008/05/17

【大紀元日本5月17日】5月12日の四川地震発生後、中国科学院エンジニアリング地質力学重点実験室研究員の李世輝さんは同夜、自分のブログに「地震予報専門家は今回の大地震を予報したが、無視された」ことを発表し、人々の強い関心を引き寄せた。多くのネット利用者はこの内容を転載して、当局の姿勢を非難した。

*四川大地震を予測した専門家

李世輝さんは文章の中で「四川省汶川で発生した大型地震を聞き、中国の地震科学者・耿慶国さんは落胆し、心を痛めている」と綴った。耿さんは中国地震局研究員で、中国地球物理学会天災予測専業委員会の副主審でもある。

李さんによると、耿慶国さんは2006年に旱魃・地震関係に基づいて、アバ・チベット族自治区でマグニチュード(M) 7以上の大地震を予測したという。2008年4月26日および27日に中国地球物理学会に付属する「天災予測委員会」の討論会を通じて、「1年以内(2008・5月~2009年4月)に蘭州より南、四川、甘粛、青海の境界付近に震度6~7の大地震発生が可能との予報を出した(書類による報告は中国地震局など宛てに、4月30日に投書した)。さらに、耿さんは強い磁気嵐(Magnetic storm)の組み合わせによって、明確にアバ・チベット族自治区における震度7以上の危険時期が5月8日(前後10日間以内)と示した」との内容を明らかにした。地震予報の3つの要素:震度、場所、時間がすべて明確に記された。

四川地震は予報されていたことを明らかにした李世輝さんのブログ(ネット写真)

*排斥された地震専門家

李さんは「耿さんは人間国宝級の能力を持つ人物なのに、中共政権におもねる地震科学者らに排斥され、わずかな退職金で科学研究を続けている。有効に活用されるべき定年退職された地震科学専門家の意見がいかされなかったのは、とても残念だ」と語った。

李さんによると、1972年に耿さんは論文「旱魃・地震関係の大地震中期予報方法」を提出した。この論文に沿って、耿さんは1975年の海城地震を予報し、特に1976年の唐山地震も予報した。1980年に科学出版社の「中国旱魃・地震関係」を出版した。

しかし、これらの成果は地震界権力派の利益を脅かしたため、耿さんは予報チームから外され、地震新聞社へ左遷された。

*唐山大地震を予報

2005年5月、「報告文学」誌は張慶洲氏の調査「唐山警世録」を発表し、唐山大地震前の予報内幕を明らかにした。地震専門家・耿慶国さんは昨年、

2005年12月17日「海城地震から青龍奇跡討論会(第20回天地生人学術会議)」にて、(左から)耿慶国さん、汪成民さん、李世輝さん(写真:李世輝ブログより)

「中国新聞週間」で唐山大地震前の経験を語った。

耿さんは、唐山地震発生が発生した1976年7月のことを回想し、北京市地震チームが監視測定された各種数値の異常さは顕著に現われていたとし、同月14日、北京市地震チームは国家地震局に緊急電話を入れ、地震状況の緊急性を訴え、地震局予報室に対して、すぐに報告会を開くように求めた。しかし、地震局からは、天津、唐山など地区で実際の状況を調べてから、同月21日に聴取すると回答した。

耿さんは「しかし、21日になっても国家局からは誰も来なかった。北京チーム業務部副組長の張国民さんが華北地区地震情報を主管する地震局分析予報室の梅世蓉・副主任にやむを得ずに直接に電話を入れたが、梅・副主任は聴取時間を26日まで延ばした」と語った。

「同月26日、国家局から15人が集まって、1日に掛かって聴取した後、梅さんは「四川北部は地震予防するために、すでにぐちゃぐちゃになっているから、京・津・唐地区でこれ以上混乱させてはいけない。北京が首都だから、予報は慎重に」との意見を示した。

これに対し、耿さんは、「国家地震分析予報室は政策を決める部門で、大地震は目の前に迫っているが、我々はその関門を乗り越えることはできなかった」、また、「当時の地震レベルを考えたら、7月28日に確定できなかったが、7月末から8月初旬にかける予報は発表しても良かった。また、マグニチュード7・8を正確に把握できなくても、震度5以上のように発表しても良かった。唐山という確実な場所を確定できなくても、京津唐一帯にすることもできる。実際に、唐山地震発生する6時間前に地鳴り、地震前に生ずる大地の光が現われた。民衆に少しでも情報を与えていれば、死傷者数の軽減に役に立ったはずだ」と語った。

*地震局への非難飛び交う

李さんのブログに多くのネット利用者もメッセージを残し、当局が専門家の警告を無視したことを非難した。次は一部のメッセージ。

「何故国家は地震科学者を重視しないのか?無実な民衆を苦しませるのか」とか、「もう少し情報を入手できれば、死傷者は軽減したのに」、「中国政府の汚職が最も多いのだ。真面目に仕事はしないで、権力ばかり使うのだ。何故彼らを管理する人はいないのか、私が住んでいる地区がそうだ。どんな政府関係者もいて、お金しか目に入らない。国民の存在を無視して、本当に悲しい…それぞれの命は一瞬にして亡くなった。これは天災か?それとも人災?」と綴っている。

「政府関係者が知っているのに、何故民衆に知らせなかったのか。もっと早く準備していれば、死傷の数はここまで深刻にならなかった。政府関係者らは、でたらめばっかり言って、大事なことは何もしないのだ」。

「この文章は温家宝首相に読んでもらうべきだ。地震局関係者が全員耿さんと同じように、自分の肩書きではなく、人民のために働き、強い責任感を持つ科学者であれば、首相も苦労はしない。人民の生命財産も被害に遭わない。私も水利関係のエンジニアリングで、科学技術者としてあるべき良知を持っている。今日、ニュースで地震局関係者が記者の質問に答えた内容は殆どが曖昧で、まさに言葉のゲームをしているのだ。まったく笑えるのだ。中国人は愚かではない。このような政府関係者がいること自体、私が恥ずかしいのだ」。

「私は唐山大地震の唯一の生存者だ。唐山人は特に地震局に反感を持っている。壊滅的大型地震を知らせることはできなくて、24万人の民衆が亡くなった。32年が経って、四川省汶川で発生した同様な大型地震に関しても、同じように知らせることはできなかった。国家地震局の人たちよ、あなた達は税金で養わされているのは何にため?地震局長は責任を負い、辞任すべきだ」。

*無能な者が権利を握り、仕事のできる人は排斥される

次もネット利用者のメッセージ。

「恥知らずな政治屋の科学者、本当の科学者を愚弄した」「能力のない者は往々にして、能力のある者の上に立つ。これが中国の現状だ」。

「人民に害を及ぼす者たちが大勢いる、我々の国家はまだ希望があるのか。まるで大きいケーキに噛み付いているネズミの大群を見ているようだ。しかし、そのケーキはすでに穴だらけになっている」

*政府関係者、すべてが政権維持のため

さらに、次のようなコメントも、「すべてが政治のため、民生、民主、民権はすべてが権力者らに踏みにじられた」。

「記者会見を見たか。官僚らは、地震予報は世界における難題だと理由をつけて逃れた。官職を保持するために専門家の意見を無視した。国家と人民に災いをもたらした者たちだ」。

「平和ボケだ。カエルの集団大移動の現象が現われても、専門家は現在が話題になっている「環境保護」の科学道理で無理にはめようとし、地震の前兆だと認めない。そうでなければ、チベット独立分子にされ、五輪を破壊するとされるのだ」。

「この件について真面目に調査し、本当に地震局が専門家の意見を無視したのであれば、被害者のためにも、地震局関係者らを厳重に処罰すべきだ。良知を持つ科学研究者に敬意を…」。

(記者・辛菲、翻訳/編集・余靜)