ユーロ下落で、人民元切り上げを遅らせる見通し=中国経済紙

2010/05/26
更新: 2010/05/26

【大紀元日本5月26日】24日から二日にわたり、米中戦略・経済対話が北京で行われた。注目される中国の人民元切り上げ問題の行方に関しては、米財務省は、中国側に「自主的に進めるよう要請しているが、中国側は、為替政策の変更には慎重な姿勢。

最大の輸出先である欧州が財政危機に揺れる中、人民元の切り上げは引き延ばされる様子だ。中国経済サイト「アジア為替ネット」の24日付けの報道によると、米中戦略・経済対話は人民元対ドルの切り上げ促進にはならず、逆にユーロの急落により、中国が予定していたドルペッグ放棄の決定を後回しすることになる。

スタンダードチャータード銀行による最近のカスタマー宛の通知にも、人民元のドルペッグ放棄は、近い将来は発生しないだろうと予測されている。

北京の情報筋によると、中米貿易のテンションを緩和するため、先月、中国当局は、現行のドルペッグ制を停止し、人民元に小幅な引き上げを実施することを決定したという。これを受け、中国商業部は、今まで公の場で強調していた人民元引き上げがもたらす悪影響を言及することを避けるようになっていた。しかし、最近のギリシャの債務危機を起因とするユーロの下落は、北京の計画を乱したようだ。

今年に入ってからユーロ対ドルの為替は14%下落。ほぼ7%の下落は過去一ヶ月の出来事だった。人民元対ユーロの為替も先週、1ユーロ8.306人民元へと値上がり、2002年以来の最高値となっている。ヨーロッパは、中国の総輸出の19.6%を占める第一位の輸出先市場。このため、ユーロの急落は中国の金融政策に大きな影響を与えている。

中国商務部の姚堅報道官は先週、北京での記者会見で、「最近四カ月間で人民元はユーロに対して約14.5パーセントも上昇し、中国の対ヨーロッパ輸出に大きなプレッシャーがかかっている」と発言。中国からの輸出が脅かされかねないことを警告した。

ユーロ暴落の影響を受け、ヨーロッパのオーダーは明らかに減少している様子。広東省に立地するガスコンロや湯沸し器のメーカーである「欧意電器」のElvin Xu販売部長は、米紙「ニューヨーク・タイムズ」に対して、「今月に入ってからヨーロッパの顧客からオーダーの取り消しの要請が相次いでいる。ユーロの下落が利潤を食い潰しているからだ」と苦境を語っている。

イギリスを拠点とするリオ・ティント (Rio Tinto)社の最高経営責任者トム・アルバニーズ氏は、英紙「フィナンシャル・タイムズ」の記者に対して、ヨーロッパの財政危機は、中国の経済成長にとって最大の脅威であると指摘している。ユーロの下落は同社の対中国販売政策にも影響をもたらす見られている。アルバニーズ氏は、2008年第4四半期のように、金融業の危機は再び発生し、中国の経済成長に大きな衝撃を与えると見解している。

「フィナンシャルタイムズ」24日付けによると、一部の経済学者は、中国がさらに問題に直面するだろうと警告している。昨年前半に中国の輸出が急減した最大の理由は、先進国での需要が低下したことより、中国や外国の銀行からの貿易金融が一時的に消え去ったことであったという。クレディスイスのアジア地域担当チーフエコノミスト・陶冬氏(Dong Tao)は、近く、貿易金融の利用が深刻化するかも知れないと指摘する。

バークレイズ・キャピタル社の中国地域チーフエコノミスト・彭文生氏は、「ユーロの下落、世界市場に現れてきた各種の不確定要素など、中国の対外輸出へのプレッシャーが高まってきている。近い将来、人民元が引き上げられる可能性は少ないだろう。最近のユーロの動向は、アメリカに繋がっているが、中国はドルペッグにしたため、当然のことながらユーロ下落がもたらす衝撃は避けられない。今後も為替システムの改革は依然として中国にとって重要な課題の一つになるだろう」と指摘した。

一方、フランスパリ銀行のハンス・レデカー氏は、「ユーロの大幅下落は、中国の為替改革を遅らせる見込みだが、ユーロが暴落しない限り、人民元の引き上げはおそらく今年の第3四半期から実施されるだろう。中国経済のバランスを取る上で役に立つ。輸出依存を減らし、国内需要依存を高めるからである。さらにインフレの対処にも有利である」とやや楽観的な見解を示す。

同氏はさらに「中国は、人民元の引き上げ問題が、アメリカの選挙活動の議題にならないように、今年11月のアメリカの中期選挙の前に人民元を引き上げるべき」とアドバイスしている。

(翻訳編集・張Y)
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