「もはや待てない」 中国の新世代農民工、国家の安定に挑戦=全国労組連合報告

2010/06/25
更新: 2010/06/25

【大紀元日本6月25日】1%の家庭に41.4%の富が集中、世界でも貧富の格差が最も激しい国の1つの中国。所得配分の不平等により官民間の対立や群衆事件が頻繁に発生し、社会の不安定がピークを迎えている現状に関し、今年3月に開かれた両会(国策決定の場)では、社会所得の公平な配分が再び議論された。しかし、富のピラミッドの最も下に置かれている出稼ぎ労働者農民工たちは、もはや「待てない」のだ。

中共中央政府直轄の労働組合「中華全国総工会」は今月21日、公式サイトやその機関紙の「工人日報」で、「新世代農民工問題の研究報告」を発表した。「方向性を持って新世代農民工問題を解決することは、すでに国家発展の大局に影響する肝心な問題となっている」とし、「その(農民工)訴求と問題の蓄積はすでに、我が国の政治と社会安定、経済の持続的な発展、農民工家庭の幸福や個人の発展にマイナスの影響を与えている」と示している。

報告では明言していないが、政策決定層に緊迫感を与えたのは、5月から表面化した製造業労働者の賃上げと独立系労組要求のストライキ風潮。台湾資本の世界最大の電子部品メーカー「富士康」での従業員の相次ぐ自殺や、広東省佛山にあるホンダ部品工場の連日ストライキが、出稼ぎ労働者によるストライキ風潮の幕を開けた。燎原の火のように、中国沿岸地区の製造業密集地域で起きたストライキが内地まで蔓延、現在も各地に拡大している状況である。

ストライキを起こしたのは、いわゆる「中華全国総工会」報告で言及された「新世代農民工」たち。16歳から30歳の世代で、1.5億の出稼ぎ農民工の6割を占める。若い階層や農業はほとんどできないことで、「新世代」と定義されている。前代の農民工とは違い、新世代は労働者の権利意識を持ち、「その訴求は高いレベルに向かっている。就業の条件を給料のみではなく、働く環境や福利厚生、将来性にもっと重点を置いている」という。

「新世代の農民工は、我が国の経済と社会発展において、日々主力軍の役割を果たしている」と同報告は述べる。

一方、中国の経済を支える製造業の主体である彼らが、ストライキによって賃上げを獲得する前の平均月収は1千元。「里帰りするお金さえもなかった」とストライキに参加したある若者がいう。

安価な農民工を基板にする「中国製造」の経済モデルは、過去30年、中国経済の発展をもたらしたが、その基板にいる彼らは、もっとも厳しい生存状況に置かれている。その結果、「富士康」の自殺やストライキ風潮に至っていると、政府の研究機関「中国社会科学院」の唐鈞研究員は見ている。

「彼らはもはや待てないのだ」「その問題を解決しないと、もっと大きなことに発展してしまうだろう」と、同研究員がBBCの取材で話した。「長年にわたり累積してきた社会の対立は、避けて通れない問題となり、一刻の猶予も許されない状態となった」と同氏は指摘する。

「国民の所得をアップさせ、中産階級が主体となる社会の構造を形作り、中国経済モデルを転換していかなければならない」と説明した同氏は、出稼ぎ労働者の賃上げは中国経済モデルの転換点の印であると見ている。

一方、政府メディア「人民日報」17日の評論報道は、中国の貧富の格差は拡大しており、消費を抑制していると報じ、そのことは、経済と社会の持続的な発展を妨げていると分析、社会の安定と国内の消費を促進するため、政府は労働者の収入をアップさせるべきだと指摘した。

(日本語大紀元ウェブ翻訳編集チーム)