重工業発展のもたらす汚染 周辺都市に「時限爆弾」=中国

2010/08/22
更新: 2010/08/22

【大紀元日本8月22日】先月、中国最大の黄金生産企業である紫金鉱業は、福建省にある同社の鉱山で、2回にわたり、廃水液を漏えいした。合わせて約1万立方メートルの廃水が近隣の河に流れ込み、魚の大量死を招いた。事故現場周囲の2村における抜き取り検査の結果、現地の飲用水と土壌のカドミウム含有量が極めて高いことが明らかになった。

鉱山が所在する上杭県の2村に住む多くの住民は、現地の水や土が汚染されていると疑い続けているが、資金鉱業と福建省当局は、水質が安全であるという調査結果を公表した。しかし、香港南華早報の今月16日の報道によると、中国環境科学研究院が二つの村からの水と土壌のサンプルを検査した結果、高濃度のカドミウムが検出された。

カドミウムは毒性の高い発がん物質。現地住民によると村ではこの2年間、一連の癌症状による死亡例が後を絶たず、死者の中には7歳の男児も含まれているという。

中国で飲用水として使える地表水は半分以下

紫金鉱山の汚染事故は、近年中国に続出した重金属と化学汚染事故のひとつ。先日、豪雨により発生した山なだれのため、化学原料の入った容器7千個が松花江へ流れ出し、吉林市と下流のハルビン市はパニックに陥り、市民が先を争って飲用水を買うという一幕も起きている。

だが、これらの汚染事件は氷山の一角に過ぎない。中国環境保護部が今年上半期、全国1千か所近くの地表水検査を行ったところ、安全に飲用できる地表水はわずか49.3%だけで、4分の1近くの地表水は汚染されているだけでなく工業用水にさえ使用できない状態だということが明らかになった。

中国の環境問題について全国数百社の報道機関と共同で行った取材プロジェクトの一環として、昨年、中国産業新聞協会が東北と華北で水質調査を行った結果、プロジェクト責任者である王立忠氏は「見るも無残」との言葉で米VOAに所見を伝えた。

「東北では主に吉林省四平市の状態が非常に悪く、地下水源は全て汚染されている。化学工場の廃液は垂れ流しで、廃材は積みあげられ放置されており、廃液は全て水路に排水され最後に遼河に流れ込んでいた」

重工業が環境に肝心な地区に集中

遼河は東北地区の南部最大の河。国家環境保護部の資料によると、遼河沿岸には165か所の工業汚染源企業が立ち並び、水銀、カドミウム、クロムなどの重金属や分解されにくい有機汚染物質が排出されているという。これらの汚染源企業には王氏が言及する市・県レベルの小形企業は含まれていない。

ここ数年、中国で重工業の急速な発展に伴い、各地で化学工業、石油企業が大量に起ち上げられた。これらの企業は水源の大量需要から、大多数が環境に肝心な川や、湖、海の沿岸に配置されており、更に一部は都市飲用水の水源上流に建てられた。

中国国内メディアの報道によると、中国の化学工業、石油プロジェクトの中の81%が環境にを保護すべき水源地区に設立されており、このうちの45%が環境汚染に重大なリスクをもたらすという06年の政府のデータが報告されている。

一部の環境専門家は、これらの急速に発展した重工業はまさに都市周辺の「時限爆弾」であると考えており、うまく処理できなければ都市発展および人々の健康、財産さらには生命にも巨大な損失をもたらすとしている。

専門家:修復の速度は破壊に及ばない

中国で第三の大河である淮河の管理に、十数年奔走している民間環境保護活動家である霍岱珊さん(ホーダイサン)はVOA放送を通して、重金属や化学物品の汚染は以前から常に存在していた問題だが、近年重工業の発展により広範囲において発生し、民衆の生存まで脅すようになったため、注目されるようになったという見方を述べた。

現在河川付近にある化学製品工場が移転する事例も現れており、国も化学物質や汚染物質を継続的に排出する企業に対し調査を行っている。しかし、環境を破壊する廃水の排出量を減少させる方法を探らなければ、効果は薄いと霍さんは考えている。

撮影記者だった霍さんは取材活動の中、淮河の汚染問題に愕然とし、記者の職をやめ、淮河の環境保護に身を投じた。「十年の治水は虚しい夢となった」という記事を発表し、淮河の回復プロジェクトは1994年から始まったが、汚染状況は日増しに深刻になる一方だという事実を曝露した。

「修復の速度が破壊の速度に追いつかない場合がある。10年を費やしてCODはやっと下がって来たが、アンモニア態窒素の問題はまだ解決していない。治水管理は10年周期だ。もしこの周期に従わなければ、(治水の)結果は人々を失望させるものになると予測される」と霍さんは語った。

中国の環境専門家たちは重金属汚染を徹底的に除去する有効な手段はないという認識に立っているという。報道によると、中国における重金属汚染問題の処理は他の工業国に比べ立ち遅れており、土壌および水質汚染に関する環境基準も世界的水準からはるかに離れたものとなっているという。

(翻訳編集・坂本)