中国の台頭に オーストラリア、海軍強化か

2010/09/26
更新: 2010/09/26

【大紀元日本9月26日】西太平洋での中国人民解放軍の影響力が強まり、米中との緊張が高まっている。アジア太平洋諸国のみならず、英米と結束の強いオセアニア圏・オーストラリアでも海軍強化が専門家から予測されている。

南シナ海をめぐる緊張感 

中国の2つの海に対する主張にアメリカは注意を向けている。一つは黄海で、もう一つは南シナ海。中共外交担当トップの戴秉国(たい へいこく)外交官は5月、「国益の核となる」海だと述べた。

これらの人民解放軍による声明は、130万平方マイルに及ぶアジア太平洋海路への中国の権利主張を繰り返し、同時に、軍事的支配力を広げていることを示唆している。たとえば、1500キロを射程とする対艦弾道ミサイルの開発、外国の海軍および警備船に衝突させるなどの攻撃的な両海諸島の領有権主張、南シナ海の海軍強化などが例に挙げられる。

これに対してアメリカは、クリントン国務長官が7月に行われたASEAN地域フォーラム(ARF)の閣僚会合で、南シナ海の自由な航行は米国の国益であり、南シナ海における領有権問題で多国間協議を支持すると明言した。また9月8日、ワシントン拠点のシンクタンク・外交評議会(CFR)では、アメリカの「アジア回帰」を宣言している。

2009年3月、梁光烈(りょうこうれつ)人民解放軍上将は2015年までに2台の空母を構える予定だと発表した。未確認情報では、2020年までにさらに2台の原子力空母を保有するだろうと伝えられている。空母保有は、まさに軍事大国の象徴であり、21年間連続2ケタ増の軍予算を見ると不可能ではないと推測される。

専門家「中立よりも米側に」

中国空母の出現は、西太平洋のシーレーンを利用する多くの国々へ大きな衝撃を与えることとなる。オセアニア圏の英米同盟国・オーストラリアも例外ではない。第2次世界大戦以来、アメリカと同盟を結ぶオーストラリアは、同国の防衛をアメリカに頼ってきた。しかし2007年より、中国は同国の主要な貿易取引国になっている。太平洋における米中間の緊張は、オーストラリアにとって安保と貿易という面において板ばさみに置かれることとなる。

「中国が台頭するなら、オーストラリアは、歴史的な英米同盟との相対的な利益に重きをかけるべきだ」と、ジョン・フローウェンオーストラリア軍准将ははっきりと述べている。長期的な国益を見越すならば、中立的な立場を取るよりも賢明な判断だという。

現在、オーストラリアは空母が保有していない。しかし、外交問題に精通する弁護士ロバート・C・オブライエンは「英米が太平洋防衛力の強化を欠かせないと考えているなら、オーストラリア海軍へ一つ空母を購入することを勧めるだろう」と述べている。

9月13日から発足した、オーストラリア新内閣ギラード政権では前首相、ケビン・ラッド氏が就任した。中国語も堪能なラッド氏は、中国海軍の太平洋地域での影響力拡大を警戒して、海軍増強の必要性を長らく強調してきた。

オーストラリアが貿易ルートの安全を維持するには「航海の自由」を保護する準備が必要となる。第一次世界大戦時から同盟国であるアメリカの海軍は、かつて「7つの海を支配する」と揶揄された。しかし現在は、軍艦数を313隻から286席と減らしている。先月、オバマ大統領はさらに8隻を廃船にすると発表した。

今日の「太平洋に対する中国海軍の脅威と、米海軍の軍艦数の減少から見て、オーストラリアは自国の海軍能力を高め、国家の気概を示す必要がある」とオブライエン氏は述べている。

(編集・佐渡)