アフリカ人の取締を急ぐ広州 アジア競技大会前に

2010/10/15
更新: 2010/10/15

【大紀元日本10月15日】「家に帰ると警察が戸を叩く。町にいれば警察に捕まる。バスの中、レストランの中。どこにいても同じ」中国南部の大都市、広州市在住のナイジェリア人、Ojukwu Emmaさんは、英紙ガーディアンの取材に対し、警察からの嫌がらせともとれる抜き打ちの取り締まりへの不快感を訴えた。

「中国のリトル・アフリカ」と呼ばれるほど、広州は過去10年間で、アフリカからの移住者や商人が多く集まった。ナイジェリア、ブルキナファソ、ソマリア、コートジボワール、ガーナ、タンザニア、アンゴラなどアフリカ各国からきたその数は、広州市社会科学院城市管理研究所によると20万人に上る。

しかし、彼らに対するいやがらせと偏見が広範囲にわたっている。最近では11月に広州でアジア競技大会が行われるため、パスポートチェックが強化された。アフリカ人に対して、レストラン、道ばた、友人の家でさえ、いたる所で随時に警察のチェックが入る。

卸売業者のためのカナーン・マーケットの前に、赤いビニールの幟(のぼり)旗が立てられている。「広州へようこそ」と歓迎するセリフがあるが、警察が確認するためのパスポート所持を要求する文が同時に並ぶ。

「この旗が意味するのは、拘留された若者に対して怪我させたり、やる気を失わせている取締りがある証拠」とOjukwuさんは言う。

中国が、北京オリンピックや万博などの国際的なイベントを行うとき、直前にビザの更新を渋ったり、出入国管理を強化することは、外国人滞在者にも周知されている。当局が抜き打ちチェックの対象をアフリカ人のみにしたり、ビザ更新を難しくさせることについて、滞在者は不満を述べている。

2週間の期限切れのビザで滞在するナイジェリア人商人のNkiruka Obiさん(仮名)は、「多くの中国人が私の国にいます。しかし誰も、彼らを追いかけたりしません」とガーディアン紙に言う。また、別の滞在者は、大衆の偏見が高まっていて、取り締まりをあおっていると恐れているという。

広州市中心部では昨年7月、警察が不法滞在の取り締まり中にアフリカ出身者がビルの6階から転落して死亡する事件があり、アフリカ人移住者ら100人以上が抗議行動をとる騒動があった。

Mary Ngumさん(仮名)は合法的に滞在しているが、警察の取り締まり奇襲と大衆の差別がひどくなれば、アフリカに戻ると話している。語学学校の入学試験を受けると、校長に「なぜならあなたは黒人だから」と入学を拒否された。バスに乗ると、隣に座った中国人は侮辱的に自らの鼻をつまんだ。「彼らはいつも『色』について話しています」と、Maryさんは彼らの無知に傷ついている。

90年代後期、広州など香港側に近い工業地帯を中心に、アフリカからの移民が集まり、黒人街が誕生しはじめた。国内の人件費が高くなってきたため、外国企業の工場がアフリカで労働者を募集し、現地で雇ったのが始まりと言われている。

しかし、移民に対する法規や入国ビザ規定の体制がまったく整備されていないと専門家は指摘する。広州市社会科学院都市管理研究所の黄石鼎(ホアン・シーディン)所長は、「広州市が国際都市になるためには、在住外国人の法的管理制度を整えなければならない」と述べている。

ドイツのラジオ放送ドイチェ・ヴェレは、中国人のアフリカ移民に向ける視線の冷たさを指摘する。広州市の中国人はアフリカ人を「中国に資源を提供する地域から来た人々」と認識している。また外国人とはいえ、日本や欧米のような先進国でないため、規模の大きいビジネスを期待していないという。北京では黒人が差別的に「黒鬼」と呼ばれており、タクシーはアフリカ人をパッシングすることもあるようだ。

(飯村)