水利が水害に 食糧危機まで招く中国の水資源問題

2011/02/15
更新: 2011/02/15

【大紀元日本2月15日】中国政府は先月、「一号文書」と呼ばれる毎年年初に出す一番目の政策として、「中国共産党中央国務院が水利改革発展を加速する決定」を発表した。この先10年間で、水利インフラに4億元を投資するという内容が盛り込まれている。中国北方地区の厳しい干ばつ状況が数カ月続くなか、同決定の発表は、中国当局が今までの水利インフラは失敗であり、水利は水害になってしまうことを認めていると見られている。深刻な水資源の問題を抱える中国は、今後直面する食糧危機はさらに憂慮される問題となるだろうとも指摘されている。

今回の一号文書は、中国共産党政権樹立以来初めて水利問題に焦点を当てている。文書には水利が中国の洪水防止、水供給、食糧安全と関係し、中国の経済や生態、国家の安全にまで関係していることが強調されている。さらに今後5年間、これまでで最も厳格な水資源管理制度の基本を打ち立て、用水総量、用水効率のコントロール、汚染受け入れの制限という3つの厳格な禁止ラインを厳しく決めることなどが規定されており、水資源不足問題の深刻さが窺える。

干ばつの原因はダムの放水

昨年10月以来、中国北方の大部分の地区では極端に雨が少なく、黄淮、華北などでは干ばつの範囲が拡大し続けている。中でも山東、河南、河北の大部分と山西南部、江蘇および安徽北部などは深刻な状態だ。

中新社によると、山東省の干ばつが最も深刻だという。1月下旬の時点で、山東省全省で干ばつに見舞われている小麦の作付面積は、同省小麦作付面積の55.9%を占める約201万ヘクタールで、24万人の飲用水確保が困難となっている。現地政府職員によると、350本の河川が断流し、400カ所近い小型ダムが枯渇しているという。

中国政府はこの干ばつを自然災害と報道しているが、山東省地元村民の話によると、農地の水が不足している本当の原因は干ばつではないという。政府の報道の中にも広範囲に及ぶ干ばつ地区の写真が見られない。実際には、政府がダムの維持補修のために、ダムの水を放水してしまったという。しかし多くの地区では、100点xun_ネ上有効な雨が降らず、政府の言ういわゆる「100年に一度」の大干ばつを招いている。

その一例として、同省曲阜市の村では昨年下半期、現地政府による大規模なダム補修工事が行われた。その際ダムの水が全て放水された。このことについて取材に応じた同市水利局の職員は、昨年起きた洪水災害により、各地にある多くの中小型ダムが、長期間補修されていないことが原因で、次々と決壊し現地の災害を深刻化させたと説明している。そのため、水利部が全国レベルで危険なダムの補修維持を要求した。山東省はこの補修工事過程において、ダムの水を全て抜いたのだという。

昨年から行われている全国規模のダム補修工事について、政府系の人民ネットは昨年10月、水利部が決壊の危険があるダムに対する監督検査を行っていることや、2010年末までに補修対象となったダム6240カ所の補修の完成について報じている。

水不足が食糧生産の脅威に

中国の水源総量は2.8億立方メートルで、世界でもトップクラスだ。だが一人当たりの水量を計算すると、わずか2300立方メートルしかない。気候専門家は水資源の欠乏は中国農業の最大の脅威であると警告している。05年に3882ヘクタールだった農地干ばつ面積は、07年には4899ヘクタールに拡大している。そして昨年10月から現在までに全国で干ばつの被害にあった作物の作付面積は、およそ6039万ヘクタール。

1998年、ワールドウォッチ研究所のブライアン・ハルウェイル氏が発表した論文「China‘s Water Shortage Could Shake World Grain Markets」では、中国における農業用水供給の激減は世界の食糧安全構成に対し脅威であると考えている。中国は人口12億人に必要な食糧の70%を灌漑地で生産している。同時に農業用水を日増しに抽出して、急速に発展する都市と工業用水の需要を満たそうとしているため、河川が干上がり、地下水も枯渇しつつある。

これに加え、多くの耕地は汚染を受け、面積も減少し、土地の基本生産力も落ちている。中国の食糧生産は空前の危機に直面しているのだ。

最近、中国はアフリカとの農業協力関係を加速している。中国政府はそれをアフリカの食糧安全問題を解決するためと主張しているが、『The Coming Famine: The Global Food Crisis and What We Can Do to Avoid It』の著者ジュリアン・クリブ(Julian Cribb)氏はCNNの取材に応じた際、北京がアフリカで耕地を借りて食糧を栽培しているのは、自国の食糧生産がすでに限界に達しているためであると指摘している。

過度の開発で水資源を窮地に

2010年上半期に起きた西南地区大干ばつの後、洪水災害が西南部の広西、重慶、湖北などの人々を襲った。今年に入り南方は氷に閉ざされ、北方では干ばつで降雪が少ないという異常気象に見舞われている。専門家は干ばつであれ洪水であれ、水土を保護することが出来ないため、環境は生態バランスを失うと考えている。

節度のない河川開発や原始林の破壊、GDP増長への追求は中国の干ばつや洪水災害の最大の原因であると、ドイツ在住の水利専門家・王維洛氏は指摘している。特にチベット高原の破壊は、中国の生命線である給水塔を破壊することを意味しており、これにより中国経済は後戻りできない道を進んでいる、と同氏は見解を示す。

王氏によると、チベット高原は中国の給水塔であるだけでなく、アジアの給水塔である。中国政府はチベット開発のために、この給水塔を破壊し、水力発電所を建設した。それだけではない。金鉱開発、玉石採掘、漢方薬材や髪菜(中国料理の食材)の採取を行い、草原を破壊し尽くした。長江、黄河の多くの支流は、ダムや水力発電所によりその流れを断たれていると指摘している。

(翻訳編集・坂本)