【大紀元日本6月13日】ベトナム政府は9日、中国の漁船がベトナムの排他的経済水域で同国の地質調査船のケーブルに衝突し破壊したとして、中国当局に抗議した。同海域は石油資源が豊富な南シナ海に属している。最近では、南シナ海の領有権を主張する関連諸国の間で緊張が高まっており、専門家は、中国当局の態度がますます攻撃的になっているとの警戒感を示した。
ベトナム外務省の阮芳雅・報道官は記者会見で、当時の状況を次のように説明した。ベトナムの石油会社の探査船は9日午前、ベトナム本土から200海里(約370キロ)離れた排他的経済水域での作業中に、中国の漁船が漁政船2艘に護衛されながら、ベトナムの船のケーブルに衝突して破壊した。
同報道官によると、中国側はベトナム側の警告を無視して、故意に探査船のケーブルにぶつけ、その上器具を同探査船につなげる網の中に差し込み、正常な探査活動を妨害した。
同報道官は、同事件は「事前に綿密に計画された」とし、目的は、議論する余地のない地域で領土紛争を起こすためだ、と述べた。ベトナム外務省は同日午後に中国大使館の関係者を呼び出して抗議を行った。
2週間前には、中国の海洋測量船3艘が同海域でベトナムの石油探査船のケーブルを切断する事件を起こしたばかり。それを受けて、ベトナムの首都ハノイでは6月5日、数百人の若者が中国大使館前で抗議を行い、中国当局に対して、ベトナムの領土への侵略を停止するよう求めた。
BBC(中国語版)によると、阮芳雅・報道官は、1982年の国連海洋法公約に基いて、関連の海域は完全にベトナムの領土と定められている、と主張した。
一方、 中国外交部の報道官は「ベトナム側の主張は完全に事実と反している」とし、「中国が南沙諸島と付近の海域の主権を持っているのは周知の事実であり、議論の余地がない」と発言した。
ベトナムのズン首相は9日、同国の「青年日報」紙に文章を発表して、ベトナムと中国の南シナ海における領土紛争について初めてコメントをし、「議論の余地がない」主権を断固として守ると述べた。
一方、両国の領土に関する争議が深まる中、両国による相手国へのハッカー攻撃も頻発している。BBCによると、中国ハッカーに攻撃されたベトナムのウェブサイトには中国の国旗が貼られ、一方、ベトナムのハッカーに攻撃された中国のウェブサイトには武装兵士の写真が貼り付けられた。
南シナ海の周辺海域は国際的に重要な航海ルートであるほか、豊富な海底油田の資源も1970年代後半に確認された。そのため、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの諸国は皆、その部分あるいは全領有権を主張しており、たびたび外交摩擦を起こしている。
フィリピン政府関係者も最近、中国による主権侵害を非難した。それによると、今年2月から、中国は6回にわたり南シナ海の、フィリピンが領有権を主張する海域に進入したという。
この指摘に対して、中国当局は南シナ海の領有権を保有していると反論。駐フィリピンの中国大使・劉建超氏は9日、南シナ海の領有権を主張するすべての国に対して、同海域での石油探査活動を中止するよう警告した。
米VOAは専門家の意見として、「中国は最近、南シナ海の領土問題について、態度がますます攻撃的になっている」と報じた。
同報道は、米スティムソン・センターの東南アジア研究チームの責任者リチャード・クローニン氏の見解として、「中国当局は同海域の緊張情勢をもたらしている」「米国海軍の測量船を妨害するほか、中国は、探査船のケーブルを切断したり、多国籍企業の同海域での調査活動を阻止したりしている。中国当局は武力を講じる能力と可能性があるのだ」と報じた。
一方、中国外交部の洪磊・報道官は、「中国政府は一貫して、同地域の平和と安定の維持に尽力しており、関連の国と連携して、同地域を平和、友好、協力的な海域に建設する志である」と述べた。
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