海外移住を急ぐ中国の富裕層 財産に危機感

2011/09/13
更新: 2011/09/13

【大紀元日本9月13日】「億万長者にとって最も住みやすい都市」と中国人の間で言われている北京市に、億万長者の蘇さん(匿名)は住んでいる。不動産開発で巨財を蓄えた彼は、贅沢な暮らしをする富裕層の中の富裕者だ。しかし、彼の一番の願いは、中国を離れること。

財産の安全な確保、完備された医療、子供に良い教育環境を与えたいなどを理由に、多くの中国の富豪は海外永住ビザを手に入れたがっている。AP通信7日付けの記事が伝えた。

昨年、6.8万人の中国人が米国のグリーンカードを手に入れた。この年の米国永住権取得者の7%に及ぶ。

米国のほか、カナダやオーストラリアも中国の富豪にとって人気の移住国となっている。

「早く中国から離れたい」。その理由について、蘇さんはAP通信のインタビューで「中国では私有財産が認められず、何でも国に属する。たとえマンションを購入しても70年後には国の物になる」と話す。

自分のようなビジネスマンや中国の政府高官たちは、私有財産を守ってくれる外国に憧れているという。取材を受けたことで政府から自分のビジネスに損失を与えられるのではないかと心配して、蘇さんはAP通信に匿名を依頼した。

もう一つの理由は、「もう1人子供が欲しい」ということだ。一人っ子政策の中国では自由に子どもを生むことができないのである。

民主主義国家と大きく異なる一党独裁国家の中国。政府に異議を唱えた者の逮捕、メディアなどの情報媒体の検閲・封鎖。有害食品、環境汚染、医療健康などの民衆の日常生活に係わる問題についても、有効的な解決策が講じられていない。こうした中国の現状をよく知る富豪たちは、すでに妻や子どもを海外に送り出している。

外国のパスポートを有することは、一種の保険なのだ。彼らにとって外国のグリーンカードを持ちながら中国でビジネスを行うことが最も理想的なのである。一旦、政治情勢不安や民主化革命などがあった際には、外国へ逃避するという脱出策を抑えておこうとしている。

北京の海外渡航斡旋会社・美加金聯の市場関係者によると、過去15年で中国富裕層の移民傾向が強くなっているという。子供により良い教育環境を与え、医療システムが完備された先進国に行きたいというのが主な理由。ただ単に外国の生活スタイルが好きだったり、実際に移民となった友人に誘われた、などを理由に移住を希望している人もいて、その中には公的資金に手を付けた政府の役人もいるという。また、近年急速に中国で増幅してきた「仇富(貧困層が富裕層を憎む)」現象も、富裕者が中国は安全でないと感じる一つの要因となっている。

中国招商銀行(CMB)とコンサル企業ベイン・アンド・カンパニー(Bain& Company)の調査報告によると、1億元以上の資産を持つ中国の超富裕層2万人のうち、27%はすでに海外移住したという。また、47%は移住を検討中で、この層から約3.6万億元が海外に投資されているという。

上述の蘇さんは、あと10年くらいは中国に残って不動産ビジネスで財を築こうと考えているが、妊娠中の妻はすでに米国に送り出した。「住居の条件、食品の安全性や子どもの教育など、海外の生活条件はもっと良い」という。

そして、多くの富裕者は現在、中国の政治体制に不安を感じていると蘇さんは告白する。「とても敏感な話題だが、ほとんどの人がそれを意識している。海外の社会はもっと自由で公正だ」

(翻訳編集・王知理)
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