【大紀元日本4月24日】中国人民銀行は16日から、対米ドルの人民元為替レートの1日の変動幅を基準値の上下0.5%から1%に拡大することを決めた。対ドルの変動幅拡大は2007年5月以来、約5年ぶり。
独立系経済学者の謝国忠氏は16日、元の変動幅拡大は米国からの元切り上げ圧力を低下させるための対応策で、米国に対して人民銀行が、元が過小評価されていないことを証明したいだけで、将来数カ月間、元の対ドルでの上昇ペースを加速させることはないとの認識を示した。4月16日付国内「外為網」が伝えた。
米国財務省は、人民銀行による元の変動幅拡大について歓迎の意を表した一方、「中国為替レートの不均衡是正は依然として存在し、一段の進展が必要」と指摘した。また同省は、米国ワシントンで開催され20日閉幕した主要20カ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議(G20)以降に、為替操作を図る国などを指摘する半年毎の為替政策報告を議会に提出する予定。
謝国忠氏はまた現在、中国経済の成長はすでに失速しており、輸出が大幅に鈍化しているため、中国政府としては対ドルで人民元の急激な上昇を望んでいないとの見解を示した。元の変動幅が1%に拡大したことについて、「変動幅は依然ゆるく、(人民元改革からみれば)わずかな前進」と評した。
4月13日、中国政府は今年第1四半期(1~3月期)の国内総生産(GDP)は前年同期比で8.1%上昇したと発表した。今回のGDP伸び率は昨年第4四半期の8.9%から鈍化し、約3年ぶりの低水準となった。欧州債務危機で欧州向け輸出の大幅な鈍化が主因だという。
困惑する輸出企業
人民銀行の人民元変動幅拡大実施について、国内多くの輸出企業が困惑しているようだ。4月15日から広東省広州市で開幕された第111回中国輸出入商品交易会(広交会)において、多くの企業が今回の人民銀行の突然な措置により、市場の不確実性が増し、短期的に企業経営の難局に直面するとの見方を示した。4月21日中国経営報が報じた。
2005年7月に人民元が切り上げられてから、元は対ドルで約30%上昇した。これに対し、中国製造業企業の平均収益は下落しつつある。国家統計局によると、2011年まで全国一定規模以上の工業企業の営業収益利潤は約6.5%にとどまっているという。
元の変動幅拡大により、企業がより一層の為替コストとリスクを負担せざるを得ないことになる。例えば、人民元対ドルの基準値が1ドル=6.3元で、変動幅が基準値の上下0.5%、これを1万ドルで試算すると、為替レートの最高値と最低値との間の為替差益は630元だが、変動幅1%で試算すると、最高値と最低値の為替差益は1260元となる。広交会において、多くの企業は元の変動幅拡大は直接輸出受注に影響し、収益の減少につながると不安を感じている。
大幅な為替損失を避けるため、多くの企業は短期間的な受注依頼を受けることにしているという。関係者の話によると、今年旧正月以降、大規模な受注や長期間的受注が少なくなっており、15日から30日程度の短期間受注が増えた。今後、中国輸出企業に為替ヘッジをする必要性が出てくるとみられる。
しかし、一方で、輸出が大幅に鈍化しているという現状の中で、中国政府当局が人民元の基準値の設定を行っている限り、急速な元高は考えにくく、短期的に元安に誘導することもありうるとの見方がある。実際、16日から20日までの1週間の元の動きをみると、変動幅拡大実施当日の16日を除いて、大幅な値動きは見られず、元は1週間で約0.08%下落した。