【大紀元日本7月25日】「下水道は都市の良心だ」。ユーゴーのこの言葉が豪雨の後の北京を駆け巡った。21日午前10時から降り続いた170ミリの豪雨は、死者37人、市内道路の寸断、525の空の便の欠航、100億元の経済損失など、多くの被害をもたらした。ここ数年、豪雨になるたびに話題になる北京の「良心」は、今年は甚大な人命被害でその議論がさらに広まった。
北京市における排水設備は「1~3年に一度」の1時間あたり36~45ミリの降水量しか処理できない、と昨年6月の豪雨の後に市政府関係者はメディアに漏らした。その基準を「3~5年に一度」に引き上げるよう検討するとも答えていた。一年が過ぎ、被害が繰り返され、国営新華社通信はこの雨は「61年ぶり」だと強調した。
だが、37人の死者をもたらした川へと変貌した道路は「61年ぶり」では済まされないようだ。23日、高まる世論とともに、政府系メディアも異例とも思える声を出した。人民日報傘下の環球時報は、「豪雨は中国現代化発展の素顔を洗い出した」と題する評論を掲載し、37人の死亡は「北京の悲しみ」「中国現代化発展の汚点」などと厳しい見解を示した。人民日報も同日の社説で、現代化への発展は「地上の建設」のみならず、「地下の百年続く土台をもしっかり築かなければならない」と記した。
一方、ニューヨーク・タイムズ(中国語版)は「都市の良心」の欠如の理由をさぐった。「北京の排水システムはなぜ脆弱か」と題する評論では北京の地下インフラ建設に携わる専門家の見解として、排水システムの不備は資金不足によるものではなく、中国の地下空間では「電力や通信、地下鉄など、GDPに直結するインフラ建設が優先」されており、下水道は二の次に考えられているからだと伝えた。
「地下鉄建設のために路面を掘り起こす動機と決心が政府にあるなら、どうして下水道建設の動機と決心はないのか」。ニューヨーク・タイムズは都市建設の問題を解決するネックは政府の決心にあると指摘した。
北京市当局:安定維持が一番の急務
こうした反省や指摘が飛び交う中、当事者の北京市当局は「一番の急務は社会の安定維持」を指示しているという。
市共産党委員会発行の北京日報は23日の一面トップで、「目前の仕事の中心は、災害の善後処理と社会の安定維持」と題する記事を載せた。
同報道によると、22日夜、北京市当局は緊急会議を開き、市トップの郭金龍書記はその席で、「社会の安定を維持し、卓越な実績を持って党の第18回代表大会を迎えるよう」と檄を飛ばし、世論の誘導をいっそう強化すべきだなどと発言した。
北京理工大学の胡星斗教授はこの論調について、「民生を改善してこそ、社会の安定が維持できる」と米VOAの取材に対し述べ、「専制の力で安定を維持するのは本末転倒だ」と批判した。
学者で詩人の張修林さんはミニブログ・微博でこう呟いた。「一部の人たちは災害前でやるべきことをやらない。災害後は反省せず、過ちを認めて是正するどころか、社会の安定維持を唱える。まさに自分の非と罪を隠し、官位を守ろうとしているだけ」
もう一人のユーザは、「61年ぶりの災難はどうってことない。63年間続いた災難すら耐えてきたのだから」と書き込み、中国当局による63年の統治こそ、中国社会の最大の災難だと揶揄した。
そんな中、新華社は22日付の評論で、「政府機関の積極的対応と官民が助け合う北京の精神」を賞賛した。
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