中国の食糧自給率は90%以下に低下(AFP)
【大紀元日本3月22日】このほど閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、中国国内の食糧安全保障が議題となり、出席した代表から、中国の食糧自給率はすでに90%以下にまで落ち込んでいると懸念する声が上がった。中国政府は、食糧(米、麦、トウモロコシ、イモ、豆などの穀類)自給率95%を安全線としてきただけに、今後大豆など食糧安保が、政権にとって頭の痛い問題となりそうだ。
国内経済紙・経済参考報によると、中国国内の食糧は昨年も含め9年連続で増産したものの、小麦、トウモロコシ、米などの穀類の輸入は前年の4.1倍の1296.7万トンに急増。大豆の輸入は昨年、5838.5万トンで、前年比10.9%増で過去最高となった。河北省代表で、柏鄉國家食糧儲備庫主任の尚金鎖氏は全人代の席で、この合計7000万トン超の輸入量と、昨年国内食糧総生産量の6億トンを用いて計算すると、「食糧自給率はすでに90%を割り込んだ」ことが判明できるとし、海外市場への依存に懸念を示した。
中国が食糧を大幅に輸入するようになった理由は、需要の伸びに供給が追い付かなくなったことからであるが、共産党中央農村工作小組の陳錫文氏・副組長が昨年12月に開かれた財経年会2012で発表した分析によると、もし中国が国内の農産品だけで自給をまかなおうとすれば、30億ムー(約2億ヘクタール)以上の耕地が必要であるが、実際は18億ムーほど(約1.2億ヘクタール)しかなく、そのうちの6億ムーは二期作で、24億ムーと試算しても、まだ2割を占める6億ムーの耕地が不足しているという。
一方、食糧の増産に躍起になった結果、生産過程で「農薬と化学肥料を大量に投与し、農業そのものが汚染の源になってしまった」と中国人民大学農業・農村発展学院の鄭風田・副院長は経済参考報の取材で話している。
農薬と化学肥料の濫用の外、重金属汚染も懸念されている。全人代と同時に開催された政治協商会議で、中国の衛星政党の1つとなる九三学社は、中国の耕地の16%が重金属汚染にさらされ、大都市の状況はさらに深刻だとの調査結果を提出した。特に広州市では半分以上の耕地がカドミウム、ヒ素、水銀などの重金属に汚染されており、遼寧省八家子の耕地からは基準値の1.6倍のカドミウムと鉛が検出されているという(3月3日付羊城晩報)。
中国青年報2010年5月の報道も、広州・香港・マカオを結ぶ珠江デルタ地帯の重金属汚染の状況を報じていた。同報道は、IT企業・恵州美鋭電子の垂れ流し廃水の成分として、基準値の5199倍の銅、基準値の3.9倍の亜鉛、基準値の178倍の鉄が検出されたと伝えた。広東省域内の珠江デルタ地帯において、4割の耕地が重金属に汚染され、うち1割は「甚大汚染」だという。