【大紀元日本6月24日】中国当局が北部地区の厳重な水不足問題を解消するため、2002年から着工した「南水北調(南部の水を北部に引く)プロジェクト」。国営テレビCCTVはこのほど、その水源地である丹江口ダムの深刻な汚染状況を明らかにした。来年秋に同プロジェクトの完成が予定されているが、河南省、河北省、北京市、天津市などの20以上の都市の住民はこの著しく汚染された水を飲用することになる。
丹江口ダムは中国の湖北省、河南省にまたがるアジア最大の人工淡水湖。漢江の中上流に位置し、水源は漢江と丹江。
漢江は、長江の最大の支流であり、総長は1532キロ。丹江は河南省や、湖北省、陝西省の辺境一帯を流れる漢江の最長の支流。
CCTVの番組「経済半小時」は漢江沿岸の水汚染を取材し、18日の番組で放送した。
河南地区 河は住民のゴミ捨て場、有毒産業廃棄物は山積み
河南省南陽市淅川県香花鎮の宋港埠頭の下流10キロのところには、「南水北調プロジェクト」の用水路のスタート地点がある。
今、宋港埠頭は現地住民のゴミ捨て場と変貌した。生活汚水のほか、生ゴミも当たり前のように河に捨てられている。記者が訪れていた100人規模の水上レストランでは、トイレの下水道から排泄物が直接、川に排出されている。従業員は裁いたばかりの魚の内臓をほうきで川に掃き捨てた。このような水上レストランが約20軒ほどある。
住民たちは取材に対して、「ここの水は飲めない。野菜を洗ってもいけない。皆が地下水を汲み取るポンプを設置し、飲用水もほかの所から調達している」と話した。
同県の九重鎮陶岔村では、記者はさらに驚くべき光景を目にした。現地の大型バナジウム製錬工場で放置されている有毒産業廃棄物を発見した。「すでに約高さ30メートルの丘となり、刺激臭を発していた」という。
2005年にも地元紙「河南日報」はこの工場の汚染問題を取り上げた。住民は「状況は全然改善されていない。政府はまったく対応しないのだ」と話した。
廃棄物の丘の付近に南水北調プロジェクトの用水路をつなぐ川が通っている。その下流では水草も生えておらず、現地農民は「この河の水には毒があり、田植えにも使えない。魚介類はとっくに全滅した」と記者に話した。
湖北地区 年間5千万トンの汚水が漢江に流入
河北省十堰市から4キロ離れた神定河流域では、水面にあらゆるゴミが浮いており、動物の死骸が至るところにあった。川底には真っ黒な泥、川全体に異臭が漂っていた。
現場で住民に聞き取り調査すると、市の汚水処理工場が未処理の汚水を神定河に排出していることが明らかになった。住民の案内で、記者は隠された排水口三ケ所を発見した。
住民によると、汚水は週に2、3回の頻度で夜間に排出される。「下流の水はあっという間に真っ黒に染まってしまう」と住民は話す。
一部報道によれば、神定河から漢江に流れる汚水は年間で5千万トンを超えている。
付近の村民は「南水北調が完成すれば、北京の人たちはこの汚水を飲むのだ」と冷ややかだった。
陝西省地区 30万人の「糞尿の水」が漢江に流れる
陝西省紫陽県内の漢江沿いでは、両岸に住む30万人以上の住民は生活ゴミと汚水をほとんど処理せずに漢江に流している。記者が調べたところ、漢江沿いで汚水排出口が数百メートルの間隔で設置されている。県内の鉄道の駅では、公衆トイレの配管が破裂し、漏れた糞尿がそのまま漢江に流れていた。ある大型観光フェリーの従業員は、船の汚水を全部漢江に流していると証言した。
同県環境保護局の責任者は記者に対して、「生活汚水が直接漢江に排出されるのは、確かによくあることだ」と認めた。県内唯一の汚水処理工場はいまだに操業していない。
一部の住民は、「漢江は紫陽県の糞尿の池と化した」と記者に話した。
関連当局の報告書データーの信憑性
記者が現場で見た漢江の汚染状況と対照的に、今年5月に発表された政府の最新報告書は、丹江口ダムの水質が良いとしている。「6年続きでⅡ類※、特に直近の3カ月間は(最も優良ランクの)Ⅰ類に達した」という。
中国環境科学院研究院の趙章元氏はCCTV記者に対して、丹江口ダムの水質はⅢ類にも届かないと示唆し、「その水質の悪化を食い止めるのは非常に困難」と指摘した。その理由として、現地行政の怠慢、汚染排出企業との官民癒着、環境保護体制の欠陥をあげた。
※注:中国の国家水質基準では、Ⅰ類水質は、簡単な消毒処理を終えて飲用できる水。Ⅱ類水質は、汚染度が軽微で、通常の浄化処理を行えば飲用できる水。Ⅲ類水質は、遊泳に適する水、Ⅳ類水質は、農業用または噴水などの景観観賞に適する水、劣Ⅴ類水質は、一般的には使途がないと定義されている。
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