高校生が医師を殺害 治療への不満で 中国、医療現場でトラブル多発

2014/02/19
更新: 2014/02/19

【大紀元日本2月19日】黒竜江省チチハル市の病院で17日、高校3年生の患者が鉄パイプで医師を殴り、死亡させる事件が起きた。近年、中国では医療現場における暴力事件が多発しており、医療保障の不備やコネに頼る医療、格差による不公平な扱いなどへの鬱憤が事件の背景にあるとみられている。

17日に事件が起きたのはチチハル市の北鋼病院。高校3年生の容疑者は午前10時半頃、耳鼻科の診療室に乱入し、手に持った50センチの鉄パイプを外来担当の孫医師の頭部に殴りつけ死亡させた。

容疑者は1月16日から23日の間、同病院に入院し鼻疾患の治療を受けていた。退院後3度にわたり再検査を受けたが、孫医師の治療結果に不満を抱き、「復讐」に出たという。

中国では近年、類似した暴力事件が頻発している。昨年10月17日から25日の間だけでも、患者が医師に暴力をふるう事件が4件発生し、大きな波紋を呼んだ。最初の事件が起きた10月17日、上海中医薬大学附属病院の集中治療室(ICU)に、死亡した患者の親族数名が乱入し、医療器具を大破させた。20日には、遼寧省の瀋陽医学院附属病院で患者がナイフで医師を6回にわたり刺す事件が起きた。22日、広西チワン族自治区の南寧市で救急に出かけた医師が患者親族に殴られ、ナイフで脅喝された。25日、浙江省温嶺市第一人民病院で医師3人が襲われ、1人が死亡する事件が起きた。

英医学誌『ランセット』はこのほど、中国の医療現場におけるトラブルはますます凶暴化し、医師という職業は危険に満ちていると指摘した。

中国では市場経済化に伴い、国立・公立病院も独立採算制になり、患者に過剰な検査や薬を強いることで稼ごうとする営利主義がはびこった。医師の給与もさほど高くないこともあり、手術などで患者から医師に「紅包」(リベート)を渡すことも、暗黙のルールとして存在する。中国の「コネ」の風習も医療現場で特に色濃く、医師を知人に持つことや、知人の紹介を得ることは、良質な治療を受ける条件となっている。

また、医師の社会的地位も収入も先進国と比べ大きく劣るため、優秀な人材が集まらず、質の高い医師も不足している。医療現場のこうした問題で、医療に対する人々の不信感が根強い。

中国社会全体の格差も、この不信感を深めている。農民や低所得者は日頃受けている不公正な扱いに鬱憤が溜まり、命に係る医療現場でも満足のいく治療を受けられない場合、その鬱憤を一気に爆発させることが多い。

東南大学(南京市)法学院の張賛寧教授は米政府系放送局ラジオ・フリー・アジアの取材で、政府による医療への財政補助が少ないことをトラブルの原因に挙げた。「医者にかかるのが難しく、そのうえ金がかかるという医療への不満が、すべて現場の医者に向けられた」。政府の財政投入で現状が改善できるとの見方を示した。

(翻訳編集・張凛音)