台湾海峡を挟む両岸の首脳同士が7日、1949年の分断以来初の会談を開いた。米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)のコラムニストの胡少江氏は、シンガポールで開催された中国の習近平・国家主席と台湾の馬英九・総統のこの会談について、その裏を分析した。以下はその抄訳。
今回の会談のために中台双方は入念な準備を重ねてきたはずだが、開催が公にされたのは直前の4日前だった。守秘に徹底したのがうかがい知れる。一方、台湾海峡の情勢について大きな関心を持つのは米政府と台湾野党の民進党だが、米国政府は「会談の結果を見極める」と慎重ながらも歓迎の姿勢を示した。一方民進党は、会談が「ブラックボックスの中で進められた」として、その不透明性を批判し、不信感をあらわにしている。
非常に興味深い点がある。今回の会談について、中国側が意図的に台湾側に先に発表させた。このことから、中国側が、来年1月に実施される台湾総統選で圧倒的不利な情勢に追い込まれている与党国民党を、同情・支援しているのが読み取れる。これまで中国側は台湾総統との「対等的立場での」対話を一貫して拒否してきたが、今回ついに大きな譲歩の姿勢を見せ自ら開催を提案した。国民党が次期総統選でほぼ確実に与党の座を奪われるというタイミングで開かれた初の首脳会談。提案した中国側は実に時期選びに苦慮したといえよう。
今の状況下で会談を実現させても、総統選における国民党の劣勢を挽回できないことを、台湾の国内情勢を理解している人ならだれもがわかることだ。今年9月、国民党の元主席である連戦氏が北京で開かれた抗日戦勝70年記念の軍事パレードに出席したとき、(野党のみならず)台湾の主要メディアと、国民党の主だった政治家は一斉に連氏を厳しく批判した。このことから、親中路線を取ることが来年の総統選を有利に導けないこと、むしろ中国からの支持を取り付けることが、選挙のマイナス要因にしかならないことが分かる。これまでに台湾総統選への干渉失敗を幾度となく繰り返してきた中国は、このことを熟知しているはずだ。
ということは、馬英九・総統の任期満了直前に初となる首脳会談を提案した中国の狙いは、別のところにある。実は、台湾の次期与党と目されている民進党の蔡英文主席に懸念を抱いている心情を如実に表している。中国側は、今後の両岸首脳対話を一層促進させるために、中国寄りの国民党が執政するうちに対話の成果を挙げ、盤石な基礎を築いておきたいと考えている。台湾独立を強く志向する民進党政権が発足すれば、それは一層難しくなるからだ。
台湾の人々が両岸統一を拒む大きな原因は、中国共産党に政治の主導権を握られて自由民主主義制度が覆されることに、反対しているからだ。
とはいえ、共産党一党独裁体制である中国現政権に食い尽くされるだけが台湾に残された道ではない。台湾は華人社会で民主主義を実現させた好例であるうえ、台湾人が現在享受している自由と参政権は大陸の中国人が渇望しているものでもある。台湾の有識者は中国と交流を重ねる中で、自由と民主主義を勝ち取ることを進んでサポートするべきだ。そうすれば、中国国民の支持を得ることができ、台湾海峡の平和を引き続き維持していくこともできる。
(翻訳・桜井信一、編集・叶子)
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