チベット高原、氷河縮小 アジア20億人の水源危機

2015/12/18
更新: 2015/12/18

世界の屋根」ヒマラヤの氷河が縮小している。研究によると、ヒマラヤ山脈をふくむチベット高原の気温は温暖化により上昇し、氷河は20年以内にすべて溶けてなくなると予測されている。チベット高原は、アジアの20億人以上に淡水を供給する数多くの大河の源となっている。氷河の消失はアジア地域の数十億人に影響がおよび、将来、水源の争奪戦を招きかねない。

 アジア他地域より4倍の早さで気温上昇

米メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」12月5日の報道によると、中国チベット自治区や青海省などに広がるチベット高原の気温はアジアの他地域に比べて4倍の早さで上昇しており、氷河は急速に後退し続けている。専門家は、近い将来、チベット高原にある大部分の氷河と永久凍土は溶けてなくなるとみている。

「世界の屋根」と称されるチベット高原は、総面積約250万平方キロメートルと日本の国土面積の約6倍で、世界の約14.5%の氷河を保有し、南極、北極に次ぐ「第三極」と呼ばれている。また「アジアの給水塔」とも称され、アジアの20億人以上に淡水を供給している。中国の長江(揚子江)や黄河、チベットを横断し後にガンジス川に合流するツアンポー川、東南アジアを流れるメコン川、サルウィン川、インダス川など、複数の大河の源となっている。

しかし気候の変化によって氷河面積と草原面積は著しく縮小し、荒れ地が増えている。いくつかの河川は絶えず水位が下降しており、永久凍土も融解している。

水位が下降している河川の多くは世界有数の大河川であり、中国やインド、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナム、カンボジアに流れている。チベットの一部の地域で既に水の供給が減少し始めている。

水道行政を管轄する中国水利部が2013年に公表した数値によると、2011年までに中国の2万8000もの小さな河川が消失した。

中国国営通信「新華社」は4月、チベット高原の18%の氷河は既に溶けてなくなり、一部の研究者は、ヒマラヤ山脈地域の氷河の大部分は20年以内に溶けてしまうだろうと予測した。

 地球温暖化が主因

チベット高原を調査する中国の研究によると、氷河減少の主な原因は、世界的な地球温暖化。ほかには焼畑や、インド側の家庭用の調理用ストーブを挙げた。

チベット登山管理センターの張明興主任の話では、標高5200mにあるエベレストのベースキャンプ地は、氷河がすべて溶け、「石ころしかない」という。

気温上昇にもたらされたもう一つ深刻の問題は、チベット高原の永久凍土の融解だ。近い将来40%の永久凍土が消失し、2100年までに80%消失する可能性があると中国科学院の最新研究が推算している。

 チベット亡命政府 水資源をめぐる争いを懸念

今年9月、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は、ビデオメッセージで「10億人の命に懸念」と述べ、国際社会に対して、チベットの環境変化に注目するよう呼びかけた。

また亡命チベット政府は、フランスのパリで2015年11月30日~12月11日まで開かれている気候変動サミット「COP21」で、ヒマラヤ山脈地域の生態には保護が必要だと主張した。

チベット高原の気温上昇によって今後、エネルギー資源と同じように、水資源確保にめぐり衝突や紛争が増えるのではないかと懸念されている。「多くの専門家が指摘したように、チベットは非常に重要な地域だ。昔はチベットの領土をめぐって争い、今はチベットの資源をめぐって争い、そして近い将来チベットの水資源をめぐって争うだろう」とチベット亡命政府の首相(最高指導者)ロブサン・センゲ氏は語り、国際社会にチベット高原の水資源問題に注目するように呼びかけた。

(翻訳編集・山本アキ)