止まらぬ側近の海外逃亡 金正恩氏四面楚歌か

2016/01/10
更新: 2016/01/10

韓国政府の発表によると、北朝鮮金正恩・第一書記の側近の海外逃亡が後を絶たず、今年10月までですでに20人が韓国へ亡命したという。韓国紙「朝鮮日報」が報じた。

韓国国家情報院の李炳鎬(イ ・ビョンホ)主任の話では、韓国への亡命者の多くは、いずれも金正恩氏から絶大な信頼を寄せられ、海外赴任していた外交官だった。同情報院の消息筋によると、韓国への脱北高官の数は増え続けており、2013年は8人だったが、翌2014年には18人に増加した。

北京に派遣された北朝鮮人民軍総政治局の高官や、韓国への工作活動が主な任務である北朝鮮偵察総局の官僚も脱北者となった。

あの悪名高い、朝鮮労働党「39号室」の幹部もいる。党の財政経理部であり、麻薬の製造密売や偽造タバコの密売、通貨偽造等を指揮する北朝鮮の最高指導者直轄の機関とされ、金正恩・総書記個人の「金庫」でもある39号室。その職員は他の部署に比べて破格の待遇を受けているが、海外赴任中の逃亡を防ぐために、通常、家族は国内に留められて「人質」とされる。それでも、家族と共に数百万ドル(数億円)を持ち逃げした関係者がいたという。

次のような事例もある。社会主義然とした巨大銅像の建造に長けている北朝鮮は、セネガルや、アンカラ、ジンバブエといったアフリカ諸国に銅像建設の労働者を派遣しているが、その現場責任者である幹部が建設費用を持ち逃げしたという。

英紙デイリーテレグラフによると、朝鮮半島問題の専門家である早稲田大学・重村智計教授は同紙に対し「金氏の支配体制がますます不安定になっていることは明らかだ」と語った。重村氏は、2013年12月に金正恩・総書記が叔父の張成沢(チャン・ソンテク)前国防副委員長を逮捕、処刑したことが、逃亡ラッシュを招いた原因だと指摘し、多くの側近が「次は自分の番だ」と恐れているとした。

(翻訳・桜井信一、編集・叶子)

関連特集: 国際