2016年になってから、中国の習近平体制から意味深な政治的メッセージが前にも増して多く発信されている。中国問題専門家は、習近平陣営と江沢民派の政治闘争の動向、中国の今後の政治の方向性などが読み取れるとみている。主要なものをピックアップした。
◇元トップ江沢民氏とその一派への逆風
共産党中央規律検査委員会(中規委)の1月14日付の公報は、元最高指導部メンバーの周永康と元重慶市トップの薄熙来を取り締まったことは「党内の重大な政治的脅威を取り除いた」と記している。両者とも江沢民派のメンバーとされる人物で、大紀元本部の専属コラムニストは「『重大な政治的脅威』とは含みのあるメッセージで、現トップ習近平氏の退任を狙う江沢民派の政変計画をほのめかしている」と指摘した。
また、中規委の公式サイトが1月9日から断続的に掲載している、トップ就任後の習氏の内部談話を収録した本の一部内容には、「鉄帽子王」や「太上皇」「組織を超越して自分を天下第一にした」「絶対に許されない政治上の過ちを犯した場合、必ず代価を払ってもらう」などと江沢民氏らの汚職問題や政変計画を指していると思われる言葉が多かった。
1月20日付の中規委の機関紙「中国紀検監察報」は「党・国家・軍の中心的ポストにいた高官は、政治的野心が膨らみ、権力基盤を広く築いては異見者を排除するなど、国家の政治的安定に厳重な危害を加えた」との一文があった。
前出のコラムニストは「党・国家・軍のトップを兼任していた江沢民とその一派が、現トップ習近平氏を転覆させるための政変を計画していたことを指しているほかない」と指摘し、これらの一連の含みのある発表は「最後の大トラ」江氏を取締るための宣伝戦略であるとみている。
◇「習核心」
「習核心(習近平氏を中心とする)」。最近、全33の一級行政区(省・市・自治区など)のうち24の行政区のトップ、軍の5大軍区はあいつぎ、この言葉を使って習近平氏への忠誠を誓った。官製メディアの報道にもこの表現が頻繁に出ており、外部はこの動きに注目している。
名門大学の中国人民大学政治学部の張鳴・教授は取材に対し、「習氏が最高指導部の主導権を完全に掌握していることを表している」と分析した。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは「中国の政治体制は微妙かつ重大な変化を遂げているようだ」と評した。
◇習近平氏、共産党政治体制を批評か
中規委の公式サイトは1月23日、内部会議で習氏の共産党を批評する論調を公開した。「執政党は資源への支配権が絶大であるため、公権力の私物化を防ぐには、『使てもよい』権力を明文化すべき」などと党の権力を抑制する意向を示唆した。
また、同サイトは6日、共産党体制への批判とも捉えられる、「重大な過ちが許されるのはわが共産党だけ」など同氏の内部談話を掲載した。
◇習近平氏、体制の今後に強い危機感
1月21日、党機関紙「人民日報」の公式SNS、微信(Wechat)での発表によれば、習氏は15年10月末の共産党第18期中央委員会第5回全体会議(五中全会)で、「今後5年間において、国内では経済、政治、イデオロギー、社会、自然界など各方面の重大リスク、外国からは経済、政治、軍事の重大リスクが集中的に生じる。万一の場合、国家が重大な脅威に直面する」と強い危機感を示した。
◇習近平体制の周辺から「中国大変革」のメッセージ
旧正月の大晦日から2日間連続で、親習近平陣営とされる中国のニュースサイト「財新網」は国内著名な学者の論文、「我々は1万年ぶりの大変革を迎えている」と題する文章を再度掲載した。文章は、人類は歴史上もっとも激しい変革の時代に差し掛かっていると強調し、中国には大変革の諸条件がそろっていると指摘した。
財新網の胡舒立編集長は、習近平氏の右腕、中規委のトップ王岐山氏と親交があり、習氏とも交遊があるとされている。専門家の間では、同サイトの報道は「習近平陣営の声をよく代弁している」「中国の政治・経済の動向を読み取るには重要な参考になる」という評判が定着している。
(翻訳編集・叶子)
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