脱北女性が語る 北朝鮮直営レストランのウェイトレスが諜報活動

2016/05/27
更新: 2016/05/27

脱北して韓国に亡命した北朝鮮女性が、自身の前職とその「秘密」ついて詳細に語った。かつて北朝鮮が国外で展開する朝鮮料理の直営レストランで、ウェイトレスとして働いていたというこの女性は、その間にスパイとして来客者を対象に諜報活動を行うことを強いられていたという。

韓国の日刊紙、コリア・タイムズが4月5日に報じたところによると、米国営放送、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の質問状に対し、「J(仮名)」と名乗る脱北者の女性は、同僚とともに来客者へサービスを提供しながら韓国人顧客同士の会話の内容をひそかに聞き取り、店のオーナーにその内容と顧客の身分を報告していたと明かした。顧客の6割から8割は韓国人で、中には政治家や経営者といった韓国の要人も含まれていた。彼女たちの任務の全ては北朝鮮諜報機関の監視下で行われ、レストランのオーナーも実際には北朝鮮の諜報員だったという。インタビューの詳細な内容は、VOAの韓国語ウェブサイトに掲載されている。

報道によると、北朝鮮は中国やロシア、カンボジアといった共産主義国家や元共産主義国家を中心に、世界12カ国で約130カ所の直営レストランを展開しており、西側諸国の一つ、オランダにも店舗を構えているという。こうした朝鮮料理のレストランのウェイトレスたちは一般的な接客サービスを行うほか、楽器の演奏や歌、踊りなどを披露して顧客をつかんでいる。

 自由はなく、給料はほぼ没収

Jの安全を考慮して、VOAのインタビューでは彼女が以前に朝鮮レストランで働いていたことは伏せられていた。Jによると、彼女のようなウェイトレスは通常、10米ドルから15米ドル(約1100~1650円)の月給で4年間の海外任務に就くが、実際には給料を全てオーナーに渡すよう強制される。ほぼ無休で働き、北朝鮮に帰国した後、テレビや冷蔵庫、洗濯機といった家電製品と報奨金が支給されるという。

あるブログによると、中国国内の北朝鮮直営レストランで接客を行うのは全て女性で、その多くは大学で中国語や観光ビジネスを学んでいる現役女子大生だという。ウェイトレスとして諜報活動を行う間は、帰国はおろか電話すら許されず、国の家族とは手紙を交わすことしかできない。宿舎にはネット環境や携帯電話は無論のこと、テレビやラジオも置かれていない。休日は週に1度与えられるが自由な外出はできず、週に2回の買い物の際には必ず責任者が同行し集団で行動するという。

韓国の諜報機関の情報によると、直営レストランによって北朝鮮が獲得する外貨は年間1億米ドル(約110億円)以上にのぼり、この額は労働者4万5000人を擁する北朝鮮の経済特別区、開城(ケソン)工業地区が昨年1年間で獲得した外貨に匹敵する。

 外貨獲得機関の朝鮮労働党39号室

こうした北朝鮮レストランは、故金正日主席が1974年に外貨獲得を目的として設立した朝鮮労働党39号室が運営しており、台湾の三立新聞網が報じたところによると、39号室は現在、金正恩総書記の妹が管理している。 39号室は銀行や貿易会社など複数の管轄機関を持つ一方で、麻薬密売、通貨偽造、偽造タバコの密売といった不法活動を指揮し、10年には米ドル札の偽造により、米国から経済制裁の対象となった。その他にも、人身売買やマネーロンダリング、麻薬の密造など、外貨獲得のためにあらゆる手段が講じられているとされる。

こうして獲得した外貨は全て金正恩総書記の個人資産として蓄積される。韓国企業が多く操業する開城工業地区からの収益も全て「外貨」として扱われ、労働者の手元にはいくらも残らない。こうして獲得した外貨は軍備の増強に回されるほか、一部の人間が豪奢な暮らしを送るためだけに費やされる。

(翻訳編集・桜井信一)

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