中国では、各級官僚による公権の乱用が常習化している。中国政治の中心である中南海地区にある政府機関内の食堂のメニューは非常に安く設定され、税金の無駄使いだと、紀律委員による抜き打ち検査で指摘された。香港の雑誌『争鳴』6月号が伝えた。
同誌によると、3月の「両会」開催期間中に中紀委書記王岐山が、中央各部署の22の食堂を抜き打ち検査したところ、18の食堂ではメニューの販売価格が仕入れ価格の5分の1以下になっていることが明らかとなった。王氏は担当部長に「市場の価格を知っているのか、補助金はどこから出ているのか。詳しく説明すべきだ」と叱責したという。
これをうけて5月16日、中央直属機関と国家機関労務委員会は「中南海の各食堂で提供される飲食物、テイクアウト食品などについて、5月30日の朝食より一律120%値上げし、補助、優遇政策を取りやめる」と通達した。
旧ソ連から受け継いだ特権システム
中国共産党は「人民の公僕」を自称しているが、党の各級官僚は特権を利用して、優遇や横領、賄賂など税金を不当に使っている。食堂のメニュー価格の激安設定は、一例にすぎない。
中国国内では、食の安全性や水汚染が深刻化している。しかし共産党幹部は、専用の特別施設で作られた「特供」食品を口にしている。これは自然環境での生育・飼育、有機農法で育てられた作物で、その種類は米、麺類、野菜、タバコ、酒、お茶や薬、水、空気までさまざま。
「特供」は、旧ソ連時代に毛沢東政権の中国共産党に受け継がれたシステム。指導者の健康管理と、毒殺を防ぐためにあるという。しかし、現在は党の部委や省、市、県レベルの党末端組織にまで広がっている。
香港メディアによると、2012年11月に開催された第十八会全国人民代表大会以降、習近平国家主席、李克強総理、王岐山氏が就任してから中紀委と国務院官房は省部の食堂を改革し、食べ物に関する特供、特別価格、特権(三特)の廃止を命じた。
しかし、状況は改善がみられていない。この3年間、31省(区)市の副省長以上、そして部委、副部委以上の高官らはいまだに優遇を受けている。ある食堂のメニューを例に挙げると、おかず4品に汁物、果物がついてわずか15元から20元(約240円~330円)という破格の値段が付けられているという。
習近平主席と李克強総理は政令が守られていないことに対し、これまでに何度も激怒したという。李総理が何度も机を叩いて怒りをあらわにしたことも報じられている。
(翻訳編集・桜井信一/単馨)