[ボストン 10日 ロイター] – 行動経済学の研究で今年のノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のリチャード・セイラー教授は10日、ロイターの電話インタビューに応じ、実際の投資家の行動には戸惑っていることを明かした。
セイラー氏は、近年世界中で株価が着実な上昇を続けていることに触れて「わたしには謎だ。世界的に非常に大きな不確実性が存在する局面で信じられないほどボラティリティーが低いというのは、不思議なことに思われる」と語った。
一方でセイラー氏は、自身の研究分野が、物価や金利などに人間の心理がどのような影響を及ぼすかを究明する上でこれからもっと役に立てる可能性があると指摘。「私から見ると、行動経済学者たちはマクロ部門への貢献がまだ足りない」と述べた。
セイラー氏は、合理的であるはずの市場に人間の性質がどんな影響を与えるかの研究でノーベル賞を得た。自己管理の欠如や損失への恐怖が、長期的に不適切な結果をもたらす決定を促す仕組みを解明したものだ。こうした研究成果は、自動加入方式の退職積み立て計画や、年齢に応じた投資方針の修正などに応用されている。
このほか同氏は投資会社を立ち上げ、他の投資家が悪材料に過剰反応して売り過ぎた機会を利用する理論を実践したり、映画「Big Short(邦題はマネー・ショート=華麗なる大逆転)」に本人として出演し、「熱い手の誤謬理論」(成功が偶然連続したことでこの先も成功すると錯覚すること)を歌手セレーナ・ゴメスさんとともに解説したことでも知られる。
セイラー氏によると、映画を見る人に正確に話したいからという理由で当初のシナリオにダメ出しも行ったという。
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