国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は11月6日、世界各国の富豪や高官らがタックスヘイブン(租税回避地)の利用に関連する一部の調査資料、いわゆる「パラダイス文書」を公開した。中には、欧州と中東の王室や貴族、一部の米国企業、欧米の芸能人のほか、中国高官ら親族や著名女優の名も載っていた。
英BBCやロイターなど複数のメディアによると、パラダイス文書に1340万点に及ぶ各国超富裕層らの資産資料が含まれている。ICIJに加盟する世界67の国と地域、90以上の報道機関、総勢380名の記者が連携して数カ月の調査を経て、6日に世界一斉に報道を始めた。公開資料によると、各国の富裕層は約数兆ドル規模の資産隠しや脱税をしようとしている。
香港メディア「香港01」がICIJの共同調査に参加した。「パラダイス」文書によって、中国一部の上場企業が今まで公開しなかった投資やビジネス取引の詳細が明らかになった。
中には、女優ヴィッキー・チャオ(41)と夫で中国人富豪の黄有龍氏(41)は、マレーシアのカジノ王の林国泰(リム・コックタイ)氏が率いる香港企業とともに、2011年総投資規模8000万ドル(約91億2000万円)モンゴルで鉱山採掘事業に関わったと示された。夫婦は中国国内では「財テクが得意」とされている。
黄有龍氏は香港にある26社の企業の取締役を務める。ヴィッキーチャオは同じく香港の4社の企業の取締役だ。14年12月に設立した香港文化産業聯合総会有限公司の取締役リストには、ヴィッキーチャオと今年始め中国当局が香港から中国本土に連行した中国人富豪の肖建華などの中国国内富豪らがいる。
人民銀行(中央銀行)元総裁の戴相龍氏の義理の息子である車峰氏(47)がタイ富豪のタニン・チャラワノン氏の企業との間で、密かに優先株式取引が行われたことも明かされた。車氏は、中国共産党内派閥闘争に関与し、江派高官らや親族のためにマネーロンダリングを行い、指導部の機密情報漏えいの疑いで、2015年党中国当局に身柄拘束され、取り調べを受けた。
一方、中国最高指導部メンバーだった賈慶林の孫の李紫丹(25)は米スタンフォード大学での留学中に、すでにオフショア企業「ハーベスト・サン貿易(Harvest Sun Trading)」の一人株主となった。同社は、2009年英領ヴァージン諸島に設立された。10年12月、中国時計・宝飾販売大手亨得利控股有限公司 (ヘンダリ・ホールディングス)創業者の張瑜平氏が、わずか1ドルの金額で、同社を李紫丹氏に譲渡した。
また李氏は、同じく英領ヴァージン諸島に設立された会社の「シン・セン・インベストメンツ(Xin Sheng Investments)」の一人株主だ。
この二社は、北京にある情報調査会社2社の親会社だ。李氏が英領ヴァージン諸島での会社を通じて、北京の調査会社を傘下に収めているため、会社公開情報では李氏に関する記述がない。そのため、李氏の資産情報は公になることがなかった。
昨年報道された「パナマ文書」と同様に、今回の「パラダイス文書」もドイツメディアの「南ドイツ新聞」が機密文書を入手し、ICIJを通じて世界各国の記者と情報を共有し、共同取材を行った。
今回の「パラダイス」文書はおもに、バミューダ諸島のオフショア法律事務所「アップルビー」から流出した内部文書からなる。同事務所は1898年に設立し、バミューダ諸島、英領ヴァージン諸島、ケイマン諸島のほかに、中国上海、香港にも事務所を構える。
昨年の「パナマ文書」の流出元である法律事務所「モサック・フォンセカ」と「アップルビー」は全く違う顧客層を持つ。「モサック・フォンセカ」は世界各国の中間層、富裕層、超富裕層など様々な客層を持つのに対して、「アップルビー」は世界各国の権力者と超富裕層だけを顧客にしている。
(翻訳編集・張哲)
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