中国当局は近年、貧困人口を減らすための「貧困撲滅運動」を展開している。しかし、一部の地方政府幹部による貧困救済資金の着服事件が増えている。
中国メディアの報道によると、国家審計署トップの胡澤君氏は23日、全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会に2016年、報告書を提出した。同報告書によると、今年10月までに約970人の地方政府幹部が約33億元(約561億円)規模の貧困救済資金を着服した。また、一部の貧困救済プロジェクトには虚偽報告が見つかった。一部の地方政府幹部は「貧困人口」の数を水増ししたり、幹部自身が「貧困家族の一員」と装ったりして、中央政府から救済資金をだまし取ったという。このため、当局はこれまで「貧困層」と認定された各地の約10万2000人の住民に対して、資格のはく奪を決定した。
国家審計署は、中国の各政府機関と国有企業の財務収支を監督する官庁で、日本の会計検査院にあたる。
中国当局が定めた貧困ラインは年間収入2300元(約3万9100円)だ。
これは、世界銀行が2015年10月に新たに設定した1日1.9ドル未満(年間計算で693.5ドル、約7万8366円)の国際貧困ライン基準の半分しかない。同年10月前までの貧困ライン基準は1日1.25ドル未満だった。
中国当局は国内貧困人口に関する正確な統計を発表したことがない。李克強首相は15年3月中旬、全国人民代表大会の閉幕式後の記者会見で、「世界銀行の貧困ラインに基づけば、中国の貧困人口は2億人だ」と発言した。
しかし、中国当局が設定した2300元の貧困ラインからみると、実際の中国の貧困層は2億人にとどまらないことは明らかだ。
近年、中国当局は「2020年までに貧困人口をゼロに」との目標を掲げて、各地で撲滅運動を推進している。しかし、この運動に便乗した、地方政府の幹部による資金の横領や着服など汚職問題も後を絶たない。
中国当局が発表した統計によると、今年始めから7月までに、湖南省、四川省、重慶市など18の省・市で、地方政府幹部による貧困撲滅絡みの腐敗案件が、140件以上あり、摘発されている。
時事評論員の石実氏は、中国が民主主義国家になってはじめて、国民の監督の下で政府官僚らの腐敗を根絶できるが、現在の一党独裁体制では、幹部らの貧困救済資金の着服は今後も続くだろう、との見解を示した。
(翻訳編集・張哲)
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