[ロンドン 13日 ロイター] – 原油先物価格はこの3週間で15%近く下落したが、現物市場が発するシグナルを見ると、底打ちにはまだほど遠いのかもしれない。
原油先物は最近、世界的な株安や、米国が原油生産を急増させて供給がだぶつくとの懸念から、大きく下落している。
石油輸出国機構(OPEC)は、需要が供給を上回っているため下落は一時的であり、2015─16年のような1バレル=30ドル水準に再び下がることはない、と主張している。
しかし、先物よりずっと不透明な原油と石油製品の現物市場は、はるかに暗い状況を伝えている。
伝統的に、原油先物価格が下がると製油所にとって原油のコストが下がって魅力は増すため、現物市場の価格は上がる傾向がある。
しかしここ数週間、北海フォーティーズやロシア・ウラル油田の原油、大西洋のディーゼル市場など、主な欧州市場で、原油先物との価格差が数カ月ぶりの低水準に縮小した。
それぞれ理由は異なるが、全般に弱気見通しを描き出している。
「現物市場は嘘をつかない。供給過剰な地域で需要が見つからなければ、価格は下がる」と話すのは、RBCキャピタル・マーケッツのマイケル・トラン氏。
「大西洋地域はファンダメンタルズの緩みを真っ先に反映するため、大西洋海盆原油は世界石油市場の健全性のバロメーターだ。ブレント、フォーティーズ、エコフィスクといった北海原油現物が低迷しているのは、買い手を見つけるのに苦労していることの表れだ」という。
フォーティーズ原油の北海ブレント油先物との価格差は、年初のプラス0.75ドルから今ではマイナス0.70ドルに転じた。フォーティーズ・パイプラインが通常の稼働に戻ったためだ。
この価格差は、北海ブレント油先物が1バレル=45ドル前後で推移していた2017年半ば以来の最低に近い。現在の価格は62ドル前後だ。
ロシアのウラル原油も、北海ブレント油先物に対して2.15ドルのマイナスとなっており、2016年9月以来で最低。当時の先物価格は40─45ドル程度だった。
あるトレーダーは「欧州では供給があり余っており、ウラル原油は中東原油との競争に押されている」と解説する。
複数のトレーダーによると、ロシアの製油所が数カ月以内に保守点検シーズンに入って在庫がだぶつくため、ウラル原油にはさらに下落圧力が掛かりそうだ。
原油の現物価格が下がると製油所の利ざやは概して向上するが、今回はそうなっていない。ロイターのデータによると、欧州と米国では、過去1週間、原油をディーゼル油に精製する際の利ざやが18%以上も悪化した。
コンサルタント会社、エナジー・アスペクツのグローバル石油製品市場責任者、ロバート・キャンベル氏は「石油需要は全般にはさほど悪くないが、暖房油の需要は、特に米国とドイツでひどい。欧州の製油所は12月から非常に高い稼働率を維持しているため、この地域には供給があふれている一方、例年に比べると暖冬なので需要は弱くなっている」と話した。
(Dmitry Zhdannikov, Olga Yagova and Ron Bousso記者)
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