「聖地中の聖地」世界遺産のチベット寺院で火災発生、当局は情報封鎖

2018/02/19
更新: 2018/02/19

中国チベット自治区の中心都市・ラサで現地時間17日午後、世界遺産の「トゥルナン寺」(通称ジョカン寺、中国名・大昭寺)と呼ばれる寺院で火災が発生した。中国当局は、火災について報道規制を敷き、インターネット上では火災に関する動画などの投稿が次々と削除された。

中国国営通信社は17日夜、火災について「迅速に鎮火し、死傷者はいない。寺院周辺の秩序はすべて正常だ」と写真を付けず、短い記事で報道した。建物の被害状況には触れていない。

大昭寺は1300年の歴史を誇るチベット仏教の聖地だ。歴代のダライ・ラマの住居であるポタラ宮とともに、2000年にユネスコ世界遺産(文化遺産)として登録された。

米ラジオ・フリーアジア(RFA)によると、インターネット上で投稿された火災の映像や写真では、炎が寺院の上層部分まで広がった様子が確認された。中国当局は、これらの映像をすでに削除した。

中国当局が大昭寺の火災に神経を尖らせる理由について、在米人権活動家の劉青氏はRFAに対して、現地チベット族住民にとって大昭寺は政治的、宗教的に重要な存在だからとの見解を示した。

中国当局によるチベットへの高圧的な政策とチベット仏教への締め付けに抵抗して、チベット住民は1989年と2008年に大規模な抗議活動を行った。

劉氏によると、2回の抗議活動はともに大昭寺前の広場や寺院付近のラサ市中心部で行われた。

一方、地元の政府系メディア・チベット日報の18日の1面には、火事に関する報道はなかった。

またチベット日報は同日交流サイト(SNS)「微信」公式アカウントで大昭寺全体や寺院内部などの写真報道を掲載したが、同様に火災について言及しなかった。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、掲載された数枚の写真には寺院内の建物被害の様子は映っていなかった、と指摘した。

VOAによると、北京在住のチベット人作家、唯色氏はツイッターで当局が発表した写真に違和感があると書き込み、当局が意図的に火災を隠ぺいしようとしたと推測。

「『チベット日報』が発表した大昭寺の釈迦牟尼仏など仏像の写真と、以前寺院側が撮った写真を比べてみると、仏像周りの配置が大きく変わり、特に仏像の後ろに、以前にはなかった黄色い垂れ幕が掛けられている」

大昭寺を「聖地の中の聖地」としている唯色氏は、中国当局に火災の詳細原因と被害情報を発表するよう求めている。

(翻訳編集・張哲)