[2日 ロイター] – 約3000人が出席する中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が、北京の人民大会堂で5日から約2週間の日程で始まる。
今回の全人代で注目される議題やこの会議の役割をまとめた。
●全人代の議題
最大の議題は、2期限定とされる国家主席の任期を撤廃する憲法改正案だ。実現すれば、習近平国家主席は、事実上無期限に権力の地位に留まることが可能になる。
昨秋の党大会で党規約に盛り込まれた習氏の政治思想「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を憲法に明記する改正案も審議されるほか、新たに設立される汚職取り締まり独立機関「国家監察委員会」に憲法上の根拠を与える文言修正も議題に含まれる。
今年審議される唯一の法案は、同委員会の設置根拠となる「監察法」の制定だ。
政府の主要ポストの大幅な人事刷新も行われ、複数の副首相や、新たな閣僚、中国人民銀行(中央銀行)総裁などが決まるほか、政府省庁の再編も行われる見通しだが、詳細は明らかになっていない。
最も注目されているのが、国家副主席の人事だ。
習氏の盟友で、昨年まで党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会の委員として腐敗撲滅の陣頭指揮にあたった王岐山氏が、国家副主席に就くとの見方が大勢だ。王氏は、対米関係のかじ取りを任されると見られている。
習氏の最高経済顧問を務める劉鶴氏は、経済財政担当の副首相に就くと予想されている。劉氏は、次期人民銀行総裁の有力候補にも名前が挙がっている。
李克強首相は5日、全人代の開幕にあたり、18年の国内総生産(GDP)伸び率の目標を昨年と同じ6.5%前後に据え置いたことを明らかにした。
中国経済は昨年、6・9%成長し、2010年以降で初めて成長が加速した。
また全人代は開幕に合わせて予算報告を発表し、2018年の国防費は前年比8.1%増の1兆1100億元(18兆5000億円)を計上すると明らかにした。昨年の全人代では当初、予算額が公表されず、透明性を懸念する声が上がった。
全人代は、毎年恒例の首相記者会見をもって閉幕する。
●全人代の機能
全人代は毎年3月に開催され、主要法案や予算案が審議・可決される。また人事案の承認も行われる。
一般的に、全人代は中国共産党の政策や決定を全面的に追認する機関と考えられている。ただ、公害などの一部の議案では議論が盛り上がることもある。
●全人代の代表者
前首相で習氏と李氏に次ぐ党序列3位の張徳江・前副首相が議長を務める。
3000人近い出席者は、中国の31の省や地方自治体、自治区のほか、香港とマカオと人民解放軍を代表している。
このほか、主に台湾からの逃亡者やその子孫からなる「台湾代表」も参加する。代表の任期は5年。
●全人代の投票
投票は、共産党の方針に沿って行われ、圧倒的多数で可決されることがほとんどだ。だが過去には、汚職や犯罪への対応への不満を表明するため、出席者が党方針と異なる票を投じたことがある。
法律上は、18歳以上の国民ならだれでも全人代の選挙権と被選挙権がある。だが実際は、ほとんどの代表が地方の役人によって選ばれている。
●会議
全人代は、北京中心部にある天安門広場に面する人民大会堂で開催される。1959年に、中華人民共和国の建国10周年を記念してわずか1年で建設された大会堂のメーンホールは、1万人を収容できる。
国政諮問機関である全国政治協商会議も、全人代と並行して開催される。これは、ビジネス界の大物や芸術家、僧侶、非共産党員など、広く社会を代表するメンバーで構成されるが、立法権限はない。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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