米国 トランプ陣営干渉疑惑

FBI、CIA、司法省まで…監視権力を乱用か オバマ政権5つのスパイ手法

2018/06/08
更新: 2018/06/08

「魔女狩りが絶えず続いている」。トランプ大統領は2016年米国大統領選挙で、当時のバラク・オバマ大統領政権が自身の選挙陣営に仕掛けてきた多岐にわたるスパイ工作について、司法省に調査を要請した。

トランプ氏の選挙運動のロシア介入疑惑について、FBIの捜査からすでに1年経つが、双方が選挙において共謀したとの証拠は見つかっていない。

いっぽう、オバマ政権によるトランプ陣営に対する違法性の疑われるスパイ工作に注目が集まる。5月21日、トランプ大統領は「(当時の)FBIや司法省が、政治目的のためにトランプ陣営に潜入調査したかどうか調べるよう、司法省に要請する」とツイートした。

これまでのトランプ政権の司法省や下院情報委員会の調べでは、オバマ政権時、FBIや司法省の監視活動権利の乱用、国内法を迂回(うかい)できる外国諜報機関による情報収集などが、トランプ選挙陣営に対して行われていたという。

トランプ大統領は、ヒラリー・クリントン派の当局者や民主党員以外にも、自らの陣営に対する政治的な操作が組織的に行われたとの告発を受けて「ウォーターゲート」よりも深刻な問題だとの認識をツイッターで示した。

2015年末からスパイ FBI、不倫相手とのメッセージから発覚

トランプ政権における米上院の委員会が公開した、米大統領選ロシア介入疑惑調査報告には、FBI関係者のメッセージのやり取りが含まれていた。

参考リンク:米上院国土安全保障および政府問題委員会の資料

6月4日までに公開された、ベテランFBI調査官ピーター・ストラック氏とFBI担当弁護士リサ・ページ氏がやり取りしたテキストメッセージ5万通のなかで、特に注目を集めたのは、2016年9月2日ページ氏からストラック氏に打たれたものだ。

「FBIジェームス・コミー長官からオバマ大統領に伝える内容を準備しよう、大統領は私たち(FBI)がしていることの全部を知りたがっている」。

不倫関係にあったとされるこの2人のメッセージには、ほかにも「ヒラリーが10000…0(超高確率で)勝つべき」「(トランプ氏は)バカである」などの言葉があった。

また、2人の間のメッセージ内容によると、少なくともトランプ陣営に対するFBIの諜報の動きは2015年12月から始まっていた。

ストラック氏は、ヒラリー・クリントン民主党大統領選候補による私用Eメールサーバーおよび、トランプ陣営のロシア介入疑惑の調査チームの主要メンバーだった。2人はすでに任を解かれている。

監視権力を乱用 オバマ政権5つのスパイ行為

 

オバマ大統領政権が行った、トランプ選挙陣営に対する、監視活動権限を乱用したスパイ工作の方法5つをまとめた。

1.国家安全情報書簡(FBI捜査令状)

オバマ政権時のジェームス・コミー長官とアンドリュー・マッケイブ副長官が率いたFBIは、国家安全保障書簡と呼ばれる捜査令状を出し、トランプ選挙陣営を「合法的」に諜報していた。

FBIに27年間務めたベテラン調査官であるマーク・ラスキン氏は、英文大紀元エポックタイムズの取材に対して、FBI令状を出すためにはテロや殺人など各容疑に応じて厳格なガイドラインがあるが、比較的に令状発行が容易な「外国情報捜査」を理由に諜報していたのではないかと語った。

2.司法省の外国情報監視法(FISA)に基づく監視

2016年10月、オバマ政権時の司法省は、トランプ選挙陣営の外交顧問カーター・ペイジ氏に対して外国情報監視法(FISA)に基づく監視を行っていた。これにより監視対象であるペイジ氏自身の活動や接触者の情報を得ていた。

ペイジ氏は2017年11月、下院情報特別委員会の証言で、2016年7月のモスクワ訪問でロシアの副首相ら政府関係者と面会したことを明かした。しかしペイジ氏は「挨拶程度の会話を交わしただけ」とし、トランプ陣営の選挙協力要請の疑惑を一蹴した。

ペイジ氏は2018年2月、ABCニュース出演時、就任後もトランプ大統領はオバマ前政権関係者に諜報されているかもしれないと語った。なぜなら、いまだに当時のFISA捜査関係者からペイジ氏に連絡が来るからだという。

FISAはFBIや司法省が個人の監視を可能とする。悪用されれば情報は丸裸にされる手法でもある。外国情報監視法第702条に基づいて、国家安全保障局(NSA)がデータを収集・記録する。例えば、ネット閲覧履歴、通話内容、電子メール、チャットログ、画像、所有する電子機器のGPS情報など。

外国情報監視裁判所はのちに、FBIがデータの取り扱いに違反したと指摘。一部の民間企業にこの機密データのアクセス権を与えたり、提供したりしていたという。民間企業の名前について、FBIは明らかにしていない。

3.身元公開(アンマスキング)要請

オバマ政権の高官は、トランプ陣営に何百回もの「身元公開(アンマスキング)」を要請していた。アンマスキングは、NSAなど政府調査員が、捜査対象の身元を公開する諜報の用語。

しかし、この制度を悪用し、オバマ政権側はトランプ陣営の関係者の身元を晒そうとしていた。FOXニュースなどによると、オバマ政権時の国家安全保障顧問スーザン・ライス氏、国連大使サマンサ・パワー氏、CIAのジョン・ブレナン局長は、こうしたアンマスキング要請をしていた。

報道によると、アンマスキングされた人物の情報は、当時のオバマ大統領をはじめ、国家安全保障理事会(NSC)、国防総省、国家安全局やCIAトップが得ていた。

4.機密情報提供者

FBIは、トランプ選挙陣営への諜報のために、時に高名な諜報員を派遣していたとみられる。複数の米メディアによると、CIAと英国情報局(MI6)と連携している英ケンブリッジ大学ステファン・ハルパー名誉教授がその疑惑の人物に挙がっている。

ハルパー教授は、ニクソン政権から共和党の人脈とつながりを持ち、レーガン政権で国務次官補代理を務めた。先の大統領選では、トランプ陣営のジョージ・パパドプロス外交政策補佐、サム・クロービス政策顧問に接触し、情報を収集していたとされる。

ハルパー教授は2012年から2017年の間に国防省のシンクタンクから100万ドル(約1.1億円)以上を受け取っていた。2016年9月、国防省長直属の戦略シンクタンク「情報アセスメント事務局」は、同局研究員も務めるハルパー氏と41万2000ドル(約5000万円)で契約を延長した。

同年7月、ハーパー教授はトランプ選挙陣営外交顧問ペイジ氏に接近した。この月に、オバマ政権のFBIはトランプ選挙陣営に対して、ロシア介入疑惑の捜査を始めた。

しかし、この「ロシア・ゲート」はすでに1年近くFBIの捜査が行われているが、トランプ陣営とロシア政府が共謀していたとの証拠は見つかっていない。

2018年5月、司法省は大統領選の期間に、FBIに対して情報提供していた人物の取り調べを行うとした。「誰かが不適切な目的のために大統領選の内部に侵入したり監視していたとしたら、適切な措置を取る必要がある」とロッド・ローゼンスタイン司法長官は声明で述べた。

5. 外国の諜報組織

2018年2月に機密が解除された、下院情報委員会デビン・ヌネズ委員長(共和党)とスタッフのメモ記録によると、オバマ政権の司法省は、権利を乱用してトランプ選挙陣営を不当に監視しようとしていたと指摘した。

メモによると、ワシントンの調査会社「フュージョンGPS」は、クリントン陣営と民主党による費用の一部出資を受け、元英国情報部員のクリストファー・スティール氏にトランプ陣営関係者の調査を依頼。

メモによると、スティール氏は司法省幹部に「トランプ氏を当選させてはいけない」などと話していたという。

別の英国情報組織の関与も浮上している。英国情報組織GCHQは、CIAの関係者に対し、2015年後半時のトランプ選挙陣営の活動情報を提供した、と英紙ガーディアンが報じた。

報道によると、GCHQロバート・ハニガン主席は、ブレナンCIA長官に「トップレベル」の機密情報を、選挙戦真っ盛りの2016年夏に渡していた。

そしてブレナン長官は、受け取った情報を基に、「マル秘」情報をオバマ氏と3人の高官用に、別の情報を議会上院下院のそれぞれの情報委員代表者8人に渡した。

GCHQもCIAも、米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの情報組織が参加する組合「5つの目(Five Eyes)」に加盟しており、傘下組織は互いの国民が不当に監視しないよう規約がある。

「5つの目」のルールによると、たとえば加盟組織FBIは、米国政府の許可なしに、他の監視組織との収集した情報を共有してはいけない。しかし、ブレナン長官とハニガン主席が行ったことは、まさにルール違反で、政府組織を迂回して情報を共有した。

ハニガン主席は、トランプ大統領就任のわずか3日後に、GCHQを辞任した。

(文・ジャスパー・ファカット/翻訳編集・佐渡道世)