[ワシントン 13日 ロイター] – トランプ米大統領が米韓合同軍事演習の中止を表明し、北朝鮮に予期せぬ譲歩を示したことを受け、米軍当局者は在韓駐留軍の即応体制をどう維持できるか、その対応を迫られている。
米政府関係者は、米軍と韓国軍が共同で行う訓練のうち、どこまでが大統領が中止を決めた「軍事演習」にあたるのか明確ではないと指摘。だが新たな指針の下では、大規模な米韓演習は実施不可能のようだ。
「在韓米軍の即応体制は維持する。そこは間違えないでほしい」と、ある米政府関係者は断言。ただ、どうそれを実現するか、現段階でははっきりしないとも認めている。
トランプ大統領は12日、シンガポールで行われた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との歴史的な首脳会談後に、米韓演習を中止する意向を表明。大統領は、こうした演習が多額のコストがかかる上に、「非常に挑発的」だと発言し、これまで米側がはねつけてきた北朝鮮からの批判をなぞる形となった。
米朝会談後にソウル入りしたポンペオ米国務長官は13日、トランプ大統領が、北朝鮮と生産的で誠実な交渉が続いている間は、演習を凍結することを明確にした、と記者団に語った。
「北朝鮮の非核化に向けた生産的な対話をするため、環境を整えるのが、(トランプ大統領の)意図だ」と、ポンペオ長官は述べた。
韓国における軍事演習の中止は、現旧の米軍関係者を困惑させている。彼らは、トランプ大統領の今回の表明まで何も知らされていなかったという。
合同演習の中止によって、世界でも最も軍事的な発火点となる可能性の高い地域で、米軍の即応体制が損なわれることを軍関係者は懸念している。在韓米軍は長年、高度な訓練を重ねて「今夜にも戦える」体制にあることを誇りとしてきた。
米議会などからは、合同軍事演習の中止により、米韓軍事同盟の効力が揺らぎかねないとの批判の声も上がっている。また、演習中止により予算を削減できるとのトランプ氏の発言も反発を招いている。
<どんな訓練なら可能か>
米国家安全保障会議(NSC)の関係者は、今回の凍結発表後も、なんらかの訓練は継続されると話す。
「韓国防衛に関するわれわれのコミットメントはまったく変わらない」とこの関係者は語る。「通常の準備訓練や訓練交流は継続される」
元米空軍士官で現在は予備役のテッド・リュウ下院議員(民主党)は、軍事演習と「通常準備訓練」の線引きは困難だと指摘する。
「2つは、同じものに属する異なるパーツだ」と、下院外交委員でもあるリュウ氏は話した。
いずれにしても、毎年定例の「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン演習」が今年実施される可能性は低くなったとみられている。
昨年8月に行われた同演習には、米軍から約1万7500人が参加し、韓国軍と合同で訓練を行った。ほかに、オーストラリア、カナダ、コロンビア、デンマーク、ニュージーランド、オランダ、英国の各部隊も参加した。
米下院軍事委員会のソーンベリー委員長は、今年8月に予定していた同訓練に影響が出てくるとの見方を示した。
「大規模な合同軍事演習は中止される方針だと理解している」と、同委員長は語り、交渉を行い「北朝鮮を試す」トランプ政権の取り組みを支持すると付け加えた。
他の主な米軍演習は、来年春まで予定されていないと米軍関係者は言う。そのため、外交官や軍の計画立案者には時間的余裕が生じるとみられる。
米韓合同演習は、毎年春に行われる「フォールイーグル」と「マックスサンダー」が重要だが、今年の両演習は、先月終了した。
マックスサンダーの空中戦訓練にいら立った北朝鮮は、今回の米朝首脳会談開催を脅かす声明を出して反発。フォールイーグルは、戦争想定シナリオに沿って実施され、陸海空軍に加え特殊部隊も参加する。
1つの可能性は、いくつかの合同訓練を韓国の外で行うことだ。米軍のインド太平洋軍の域内には、通常訓練の機会が豊富にある。
小野寺国防相は13日、日米合同演習は不可欠であり、継続されると述べた。
リュウ議員は、北朝鮮との衝突想定シナリオを適切に再現するのが難しいとして、米韓演習を日本やグアムで行う可能性について否定的な見解を示した。「グアムは北朝鮮に似ていないので変だろう。日本もそうだ。(グアムや日本での演習実施は)有用性が不透明だ」
Phil Stewart(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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