フェイスブック中国子会社、一週間足らずで登記抹消

2018/07/26
更新: 2018/07/26

中国の工業・商業登記によると、世界最大SNSフェイスブックFacebook)は7月18日に杭州西湖に子会社を設立した。しかし、中国インターネット管理当局はこれを認めず、25日までに会社の登記を取り消した。

削除前にインターネットで確認できた会社情報によると、子会社の名前は「瞼書技術杭州株式会社」(注:瞼書はフェイスブックの中国語訳)で、資本金は3000万ドル(約30億円)、張京梅という人物が代表取締役を務める。

事業内容は、「ネットワーク情報技術の技術開発、技術アドバイス、投資コンサル、イベント運営、文化芸術組織運営」などで、フェイスブック香港支社が同社の全株式を保有している。25日までに、この会社情報は登録一覧から抹消されている。フェイスブックは公式に、中国子会社の登記および取り消しについても公式発表していない。

インターネットで確認できた中国工業商業会社登録簿(スクリーンショット)

米ワシントン・ポストによると、この子会社は「フランス、ブラジル、韓国で成功してきたようなイノベーション・ハブ(創造的な情報交流の場)といった存在になる」ことを目指していたという。米VOAもフェイスブックからのメールで、杭州にイノベーション・センターを設立したとの回答を得ている。

米ニューヨーク・タイムズによると、フェイスブック中国子会社がわずか一週間で取り消されたのは、浙江省政府と中央のネット管理当局の認識の違いによるという。ネット管理当局は、現地政府から緊密な相談がなかったことに憤怒している様子だ。

世界的に主要なインターネットサービスである交流サイト、フェイスブックをはじめ、検索大手Google、短文投稿のTwitter、動画共有のYouTubeは、すべて中国共産党政権の情報統制により、中国国内では通常利用できない。

フェイスブックはドメイン「Facebook.cn」を2007年には作成しており、2008年6月に中国語簡体字版を始めた。中国ユーザー増加のため、前首相・温家宝氏は一度、フェイスブック内で著名な政治家トップ10に浮上した。しかし、当局によるフェイスブックの断続的な遮断があった。

2008年北京オリンピックを機に一時は正常運行したが、2009年に新疆ウイグル自治区で死者190人以上、負傷者1700以上の大規模な衝突が発生して以降、情報封鎖のために、当局は完全にシャットアウトした。

米コロンビア大学の王軍濤博士(政治学専門)は米ラジオ・フリー・アジアの取材で、突然の登記抹消は「当局がSNSの影響力を恐れているからだ」と述べた。

参考:ザッカーバーグ氏が訪中、FBの解禁求め あの手この手

中国の社会主義にあこがれるザッカーバーグ氏

 

フェイスブックはあらゆる手段で中国市場参入を図ってきた。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はたびたび訪中し、自身が顧問を務める清華大学ビジネススクールでの学生交流をアピールしてきた。

欧米主要メディアによれば、2014年に訪米した中国政府ネット管理部門責任者・魯煒氏(2017年秋に失脚)に対して、ザッカーバーグ氏は「中国の社会主義を同僚に見習ってほしい」として、中国共産党による政権運営の書籍を社員にプレゼントしていると明かした。ザッカーバーグ氏は2016年に当時の中国共産党序列5位の政治局常務委員で宣伝部トップの劉雲山氏と面会した。

2017年には習近平主席も出席する中国のハイレベル経済会議に出席している。同年、上海で事務所を開き、中国SNS市場本格参入の足掛かりとして画像共有アプリ「カラーバルーン」を公開した。

中国共産党政権は、異見者の監視のために実名制をSNS管理企業に義務付けている。またユーザデータを取り扱う情報管理センターを、中国に設置するよう求めている。アップル社はこれに従い、アイクラウドのユーザー情報管理を中国国営通信企業に移管している。

ザッカーバーグ氏の積極的な中国参入の意欲は、情報安全保障の専門家に懸念を抱かせている。米誌フォーリンポリシーは2016年11月、インターネット技術の専門家の話として、フェイスブックが中国市場に参入すれば、中国当局は海外を含む全利用者データの開示要求や、在外中国人の監視協力を求めると推察している。

(編集・佐渡道世)