スリランカではここ数日、現政権の政策に反対するデモが相次いでいる。公約だった汚職一掃が果たされていないことや、中国へ国の重要港湾を明け渡したことなど、複数の不満が抗議内容に含まれている。
9月5日、前大統領ラジャパクサ氏が率いる数万人の抗議者が、首都コロンボの複数の主要道路を閉鎖した。混乱により、付近の学校は休校し、多くの企業が従業員を早退させた。
抗議活動を組織した一人の国会議員は、現シリセナ政権が、世論に反して国の資産を外国に売っていることに抗議の声を上げたと述べた。また、生活費が大幅に上昇しているにもかかわらず、政府が税金の徴収を増やしていることなどから、国民は生計を立てることが困難になっているという。
いっぽう、現シリセナ政権は、政府が抱える借金は親中派ラジャパクサ政権時代に受け付けた巨額融資によると主張している。2015年の政権交代後、中国からの借金の返済ができないと計算したシリセナ政権政府は2017年、インド洋に面し、国際物流拠点となるハンバントタ港の運営権を、99年契約で中国に貸し出した。
このたびのデモに参加した反シリセナ政権派は、この重要港の明け渡しが、スリランカの主権を脅したと主張している。インド洋での海洋覇権を狙う、中国側の戦略的な意図があったと考えられている。
サマラウィラ財務相は5月20日、債務返済額が過去最高の水準に膨らみ、債務危機に向かっていると危機感をあらわにした。AFP通信の報道によると、スリランカの2018年の元利の支払額は28億4000万ドル(約3150億円)に達する見通し。大半は前政権が取り組んだ大型プロジェクトのための巨額融資の返済分だという。
財務相は、10年に及ぶラジャパクサ前政権から引き継いだ中国依存の大型プロジェクトは、経済規模が870億ドル(約9兆6600億円)程度のスリランカにとって重荷だと説明している。ラジャパクサ大統領は親中派と呼ばれ、中国から多数の融資や援助を受けてきた。
世界に中国主導のインフラ計画を展開する「一帯一路」構想では、インド洋でも存在感を強めている。中国は沿岸部の都市に、海上貿易ルートの確保のため港湾や道路の建設など数十億ドルを投資している。
スリランカはインド南部にある島国、人口2100万人。国会は2020年8月まで。議員の3分の2が解散に同意しない限り、2020年2月まで選挙は行なわれない。しかし、2015年の大統領選で現職のセリシア氏に敗れたラジャパクサ前大統領は、再出馬を表明している。
(翻訳編集・佐渡道世)
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