中国、メディアの締め付けを強化 経済悲観論が原因か

2018/10/01
更新: 2018/10/01

米中貿易戦が長期化すると見込まれているなか、中国経済の先行き不透明感が広がっている。中国当局はこのほど、経済情勢について悲観的に報道した国内経済・金融メディアに対して取り締まりを強化した。当局がさらなる景気悪化に強い不安を抱いていると専門家は分析する。

中国ポータルサイト「鳳凰網」傘下の「鳳凰新聞」アプリは9月26日、『鳳凰網に関する整理・改善の公告』を掲載した。これによると、中国当局が同サイトの一部のコンテンツについて、「違法ニュース・情報を転載した問題や、ニュースのタイトルの本来の意味を歪曲(わいきょく)した問題」などを指摘した。このため、同サイトが一時、記事の更新を自粛しサイトの整理・改善を図るという。期間は9月26日から、10月中旬または下旬まで続く。

対象は「鳳凰網」の経済・金融、科学技術などのコンテンツと、「鳳凰新聞」アプリ、「鳳凰網」のWAP(ワイヤレス・アプリケーション・プロトコル)サイト。

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の27日の報道によると、中国メディア関係者は、鳳凰網が取り締まりを受けた理由として、このほど掲載した2本の評論記事と関係があるとみている。記事は、景気を刺激するための中国当局による大規模な財政出動と、国有企業の発展のためなら民営企業の犠牲もいとわない、いわゆる「国進民退」を批判した。

ポータルサイト「網易」の財経コンテンツも9月11日、サイトの整理・改善について通知を掲載した。同サイトでは、8月末に中国当局が承認した「個人所得税法の修正案」について評論記事を掲載したことが原因だとみられる。

また経済情報サイト「財経網」の中国版Twitter公式アカウントが9月14日以降更新されていないことについて、市民の間で憶測が広がっている。

中国国家版権(著作権)局は9月29日のSNS微信(ウィーチャット)で、「網易新聞」、「捜狐新聞」、「新浪新聞」、「騰訊新聞」など13社のニュースサイトの責任者を呼び出し、行政指導を行ったと発表した。当局は各サイトに対して、「著作権の承認を受けていない個人が書いた記事などを直接転載してはいけない」、「転載の場合、元のタイトルと原文の意味を歪曲・改ざんしてはいけない」と命じた。

いっぽう、米紙ニューヨークタイムズは28日、中国当局は国内報道機関に対して、経済関連報道に関する新規制を通達したと報じた。同紙が入手した情報では、当局は「経済指標が事前予測に及ばないことや、中国経済の下振れ圧力、国内消費者心理の冷え込み、デフレの見通し、地方政府の債務急増問題など」に関する報道を控えるよう指示したという

同報道では、新報道規制は中国最高指導部の国内景気への悲観的な心理を反映したと指摘した。中国人民大学元教授の張鳴氏は、ニューヨークタイムズに対して、「経済情勢が楽観的ではないことを浮き彫りにした。当局は、景気が一段と冷え込むことに恐怖を感じているだろう」と述べた。

国内人権活動家の于雲峰氏はRFAに対して、「中国当局は経済の冷え込みによる社会不安が政権崩壊の引き金になりかねないと警戒し、経済系メディアを取り締まり、言論統制を強化した」と分析する。

米中貿易戦の影響で中国経済成長の鈍化が鮮明になった。中国税関が8月に発表した統計によると、今年1~7月中国の貨物貿易について、輸出から輸入を差し引いた貿易収支黒字額は1661億ドル(約19兆円)で、昨年同期比で28.3%激減した。

国内の投資について、当局の発表では1~7月までの国定資産投資が前期比5.5%増で、伸び率として26年ぶりの低水準となった。昨年同期は8.3%増だった。

個人消費の動向を示す「社会消費品小売総額」は7月の伸び率が前年同月比8.8%増と、6月の同9.0%増から減速。

(翻訳編集・張哲)

関連特集: